第6話 6交渉決裂

 17時頃、外部のモニターを終えて、

加賀見は、自室に戻った。

織多さんは、夕食前まで続けるようであった。

部屋に戻り、メール等をチェックすると、

ミラーワールド号事務局より通達があった。

まず、先日の異形種の侵入に関しては、調査継続中であること。

それに外部探索の計画書の受け付けが明日以降から

可能になり、同日より船外実地探索が許可されること。


「最短で明後日には、探索の許可が得られるのか。

まあ、大手さんからだろうから、3日後以降になるかなぁ」


加賀見は、通達を読みながら、計画書の大まかな内容を考えていた。


現在の探索計画書のフォーマットは、

繰り返される多鏡面世界への渡航経験から、

かなり使いやすく仕上がっていた。

小型外部探索機でモニターできる範囲であれば、

半日もあれば、計画書は作成できるだろう。


夕食の時間となり加賀見は、定期メールを本社に送り、

本日の業務を完了する。


食堂に入ると織多さんが手を振ってきた。

追加費用のかからないAランチで食事をしていた。

加賀見は、織多さんへ軽く手を挙げて、

料理の注文と受け取りに向かった。


加賀見は、Aランチを受け取り、

織多さんのいるテーブルに向かうと

見慣れぬ二人組が彼女に絡んでいた。


「結構です。もう、同行者は決まっていますので!

どっか行ってください」

織多さんが、きつい言葉で何かを拒否している。

Aランチを取りに行っている間に何がおきのか把握できず、

事の成り行きを確認しようとした。


中年の二人組は、各々に負けを決するような

発言をしていた。

「おいおい、スターテクノロジーズと

一緒に探索できるんなら、ラッキーだろうよ。

少し頭を働かせなよ」


「センタールームで一緒にいた男だろう。

もっと、良い条件を出せるぜ。俺らなら。

ちょっと、部屋で話すだけだから、

そうキャンキャンするなよ」


織多さんが、顔を真っ赤にして、

様子を伺う加賀見に言った。

「加賀見さん!ぼーっと突っ立てないで、

この二人を何とかしてください」


「加賀見さんよぉ、これから二年、

探索を成功させたいなら、俺らに譲りなよ」

にやにやしながら、大手企業の

スターテクノロジーズの一人が脅してきた。


スターテクノロジーズ社は、巨大企業であり、

渡航者15名を送りだしており、多分、この二人は、

渡航のために雇われた人員であろうと思われた。


「困りましたね。御社にそのように

言われてしまいますと、弱小商社としては、

申し出を断りにくいですねぇ。

私もしがいない社員ですから、

探索は成功させたいですからねぇ」


「えっ加賀見さん。」

織多さんの泣きそうな顔に気づいたが、そのまま、続ける。


「まあ、そうですねぇ。あなたがたのような

下っ端の契約社員でなく、スターテクノロジーズ社の

責任者と話をさせて頂けると助かるのですけどねぇ。

さっさと、呼んできてくれません?」

加賀見の飄々とした言い草に男どもが凄む。


「おい、小僧、死にたいのか?潰すぞ、ああっ」


「むかつく、どこの会社のもんだ!」


加賀見はにやりとして、少し離れた席の男に話しかけた。

「すみません、今の発言は、どうなんでしょう?

スターテクノロジーズ社の探索の

ペナルティーの対象になりえませんか?副船長殿?」


男は、食事を中断すると、

「そのまま、続けるようでしたら、

ペナルティーも視野に入れた方がいいようですね。

既に死者もでていますし、

探索を円滑に進めたいものですね。」


彼らからすれば、予想外の人物と

予想外方向への話が向かい、さすがにまずいと

感じたのか、二言三言、捨て台詞を吐いて、

その場からささっと去っていた。


「ありがとうございます。ご助力を感謝いたします。」

と加賀見。

「まあ、よく私がわかりましたねぇ。

ところで、どうしますか?

スターテクノロジーズと話し合いの場を設けますか?

まあ、それとあまり、目立つところでは、あまり

いちゃいちゃしないように」

と笑いながら、副船長。


「一応、事務局から注意はして頂けると

助かります。それと、いちゃいちゃとは、

一体、なんのことやら、わかりかねますが」

即答で返す加賀見。


「まあ、注意をあの会社の責任者に喚起しておきましょう。

なにかごねてきましたら、渡航前に説明が

あった船内の24時間監視モニターから、

証拠をお見せしますかねぇ。

まあ、いちゃいちゃに関しては、監視機能で

なくとも目撃者たちが証言していましたよ。

センタールームでのお二人の様子はまるで

恋人のようだと。既に事務局だけでなく、

色んなところで噂になっているかと思いますよ。」

渡航での恋話や痴話喧嘩は、格好の娯楽の話題だ。

話題のネタを提供してしまったことに愕然とする加賀見。


「ううっ加賀見さんー」

何か織多さんが言っているが、気のせいであろう。




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