第5話 5ナンパ失敗
センタールームは、既に人でいっぱいであった。
織多さんは、空きモニターの前に加賀見を招くと、
「昨日、見ていたところから、改めて検索しますかねー。
それとも共有情報画像を見てみますか?」
加賀見は、何となく織多さんの隣で
勢いにおされてしまい、二人で一つのモニターを
共有することになっていた。
「そうですね。船外探索が解除されるのが
いつか分かりませんから、昨日のところから
モニターを再開しますかね。
共有情報は、自室でも見られますから、
各々に夜間、チェックしましょう」
自室で全く仕事のする気のない
加賀見らしからぬ発言であったが、織多さんの前で
社会人の大変さをアピールしてみた。
ざっとした方針というか方向性を決めて、
加賀見は、昨日の位置情報をリロードして、
モニター開始した。
「はいっ!」元気よく、答える織多さん。
声が大きすぎたせいか、周りの探索者が振りかえり、
好奇の目線を送ってきた。
基本、一人一台は確保されているモニターであり、
チームであれば、通信によりリアルタイムで
画像共有とコミュニケーションが可能にも関わらず、
二人で一台であれば、二人の関係に
周囲は色々な興味を掻き立てられているだろう。
「織田さん、声がちょっと大きいよ。
周りが注目するから、もう少し静かにね」
若干、眉間に皺が寄るのを感じつつ、軽く注意を促した。
「すみません。ごめんなさい。注意します」
しゅんとしょげてしまい、小型外部探索機を
動かす手が止まる織田さん。
加賀見は、困ったな、そんなにきつく
言ったつもりはないのにと思い、
「ひとまず、昨日の花らしきものを見てみますか?
そこから直進で探索できるところまで
モニターしてみましょう」
と提案してみた。
「はい」
と今度は、小さな声で返してくる。
「空気成分は、私たちの世界より酸素が5%程度、
多いくらいで、安定していますね。
環境になれるために最初は徒歩で周りを探索しますかね」
「そうですね。そうしましょう」
再度、小さな声で返してくる。
女性の扱いに困った加賀見であった。
「最初に見た花は、危険がなさそうなら、
織田さんが確保しますか?」
「えっいいんですか?かなり貴重そうですよ。
私たちの世界では見たことない品種ですし、
一般受けしそうですよ」
少し笑顔が戻った織多さんだった。
「ワンダーランド社は、植物関連の利権というか
技術の収集のプライオリティは、低いので問題ないです。
まずは生きて戻れれば、ここでの生活が物語として、
メディアに展開されて、金になりますからね。
織多さんの笑顔とロマンスがその物語に
花を添えますから、大丈夫です」
実際のところ、ワンダーランド社は、
探索に関する方針があってないような
わかりにくいものだったので、軽く冗談を交えて、
答える加賀見であった。
「ぷっ、ここでナンパされても困りますよー。
探索に恋愛感情はなしです。
それにさっきの凄く怖い顔の後ですと、
効果なしですよー」
そんなつもりはなかったが、加賀見は、
何故かナンパに失敗した男の立場になっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます