第4話 4契約成立

織多さんと別れて、自室に戻ると、

活動報告書と契約書の作成を始めた。

探索業務で24時間拘束されているとはいえ、

ミラーワールド内で8時間以上の

仕事をしたくないなと考える加賀見であった。

その考えからすると、今日は自主的なサービス残業の

実施になりそうであった。


「鉄は熱いうちに打て」

そんな言葉と共に加賀見は、新人時代、

商品の見積もり、契約書、納品書等々の客先提出書類は、

極力早く処理するように訓練された。

仕事のありようが多様化している現代に

おいても絶対の企業心理であった。

 

 加賀見は、深夜1時頃に書類を作り上げ、

スリープカプセルに向かった。

ふと加賀見は、待ち合わせ場所と時間を

決め忘れたことに気づくが、どうしようもないので、

そのまま、睡眠を取った。


 二日目の朝、加賀見は、朝食もそこそこに

今日の待ち合わせに関して、織多さんへメールを飛ばす。


件名:「探索同行に関しまして」

織多様


いつも大変お世話になっております。

ワンダーランド社の加賀見のです。


さて、本日はお打合せの場所と時間について、

メールさせていただきました。


場所:食堂

時間:10~12時


ご検討のほど、よろしくお願い申し上げます


まだ、フレンドリーに書くのは、早いような気がして、

客先に出す文章のような感じで送った。

織多さんから了解の旨が届いたため、

自室に書類等を準備するために加賀見は戻った。


身に沁みついた習性か、10分前に食堂に到着し、

席を確保しようと周りを見渡すと、テーブルに

ぐでーとしている彼女を見つけた。そして、開口一番!

「おそーい。他の人たちは、

もう、探索ルートの検討に入っていますよ!」


いや、ちょっと待て、まだ、時間じゃないし、

そもそも契約してないのに、と加賀見のは思ったが、

そんなことはおくびにも出さずに

「何時ごろからお待ちになっていたんですか?

メールをいただければ、もっと早く来られましたが。

これが探索に関する契約書です」


契約書を受け取りつつ、織多さんは、

「あっ、いえ、加賀見さんは時間通りですね。

すみません。企業の契約書って、こんな感じなんですね」

3分後には、サインの仕方を尋ねてきた。

「個人保険とか同じように静脈認証を

させればいいんですか?

どうも私に有利すぎるような気も

しますがいいんですか?」


加賀見は、その速さに驚き、尋ねた。

「えっもう、読み終わったんですか?」


「はい、そうですよ~理解できました。」


あまりにあっけらかんした仕草に

加賀見は、心配になりいくつか質疑をするが、

的を射た回答しか返ってこなかった。


流石は、国定第7大学研究生だけのことはある。

速読力もだが、あの速度で内容把握している。


加賀見は、右の人差し指と左の中指を

書類のサイン欄に置いて貰うよう指示し、

各指の静脈を認証させた。


「さっ、契約も終わりましたし、

センタールームで探索ルートの検討をしましょう」


契約にこぎつけるための色々なパターンを

シュミーレートしていた加賀見の努力は、

徒労に終わってしまった。


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