第1話~あきれ返るほどの平和な世界に降り立つ、少年~

 頭をそり上げた一人の男性。…体全体が金色の、仏様を思い浮かばせるような笑みを浮かべるその男の力により。鋸谷は平原と森林地帯の境目とされる場所へと転移させられた。

 その平原はといえば、よくイメージされるような辺り一面に広がる草原、草原、草原。…反対に、森林地帯の方を見やれば…それは時を数千万か一億年くらいさかのぼったような雰囲気を醸し出していた。

 森林と平原。時代が絶妙に入り混じったかのようなその場所にたたずんでいた時。鋸谷は臍の辺りから何やら視線を感じ取る。…その視線の方に目をやれば。そこには自身の臍までの大きさがある、数匹の生き物達が群がっていた。

 恐竜のような姿の、水色の体をした生き物や黄色い体の鳥のような姿をした生き物。…様々な姿をした、どこか愛らしささえも思わせるかのような見た目の生き物達を見て。鋸谷は一瞬驚いてしまった…が、すぐに平常心を戻し身をかがめる。


「もしかして、君達がサイエンスクリーチャー?…そして、此処はサイエンタワールド、であってる?」


 鋸谷の投げかけた二つの問。…それを聞いた生き物達は、どこか驚いた風な様子を見せた後に…言葉を発する。


『君、初めてみた割には僕達の事、よく知ってるよね。…それに、なんだか変な姿。…ボク達とは、なんだか姿かたちが違うもん』


『そうだね。…何処か、この世界を統括するシゲオっていうのと同じ姿をしてる。…その子供であるヒロミチって人にも』


 鋸谷を中心として輪を作り。話をしあう生き物達。…先ほどの水色の体をした恐竜のような姿の生き物からの言葉からして、サイエンスクリーチャーであることは間違いはないようだ。

 ざわざわ、と話し合いを続けるサイエンスクリーチャー達。…其処へ、白髪の人間の男性と共に口髭の特徴的な男性がやってきた。


「サイエンスクリーチャーたちが騒がしいから何事かときてみれば、見たことのない人間だな。…この辺りは、娯楽とかは何もないが着るものと食べるもの、そして住む場所には困らない。…案内をしよう」


 初対面だというのに、どこかフレンドリーな感じで鋸谷の事を迎え入れる人間。…鋸谷は一度戸惑ったが、勝手がわからない以上あの人間の後をついていくほかない、と判断し。彼はその人間達の後をついていくこととした。

 平原の中の、土がむき出しになっている道を歩いていく人間達。…鋸谷が彼らの後をついていくうちに、一軒の丸太で作られた家に辿り着く。


「ここが私達がすんでいる家だ。…空き部屋はまだあるからな。…泊まっていくといい。…話は、中で聞こう。」


「あ、ありがとうございます…。」


 戸惑いつつも、人間達からの誘いを受け入れる鋸谷。…彼は家に入り。木を切って作られたかのような形のテーブルにつく。それから少しして…お茶の香りが鼻を突いた。


――このにおい、紅茶の文化がここにもあるんだね…。


 今まで、見たことのない光景や見たことのない生き物達ばかりだったがために、不安に包まれていた鋸谷。…ようやく慣れた感触を感じることができて、安心感に包まれる。

 カチャ、とおかれゆく紅茶。赤々とした色のお茶をみて、鋸谷は何の警戒心も抱かずにそのお茶を一口、飲んだ。

 慣れた紅茶の味。それが口の中に広がっていくのを感じ、更なる安心感に包まれゆく。…そして一息ついたのち。彼は事情を話した。

 このサイエンタワールドが、将来的にミスラウ軍という組織に滅ぼされてしまう事を知った、と言う事を。…そして、サイエンタワールドを守るために、自分はやってきた、と言う事を。…その事を聞いた二人の人間は少しの間あっけにとられたのち。白髪交じりの男の方が一つ、息を吐く。


「……このサイエンタワールドが、ミスラウ軍という組織に襲われる、だと?…ミスラウ軍なんて組織、聞いたこともない。…随分と笑える話を、してくれるものだな。」


 白髪交じりの男の言葉の直後、口髭の特徴的な男が笑い声をあげた。そんな彼らに、鋸谷は反論をする。


「…すみません、これは、本当の事です。…そして、今伝えないと…将来的に、サイエンタワールドという場所は…滅んでしまいます。信じられないでしょうが、恐らくこれは…本当の事なのです。…僕はみてきました。ミスラウ軍が襲撃して二週間ほどたった後にこの世界はたちまちのうちに滅ぼされ、向こう二年間は植物が全く生えない酷い世界になります。…どうか、信じてはくれませんか?」


 必死に、自分の見てきたことを伝える鋸谷。…にやにやと笑みを浮かべている若い方の男とは反対に、白髪交じりの男はしばし考えるような様子を見せた後。…鋸谷の目をまっすぐに、ジッ、と見つめ始めた。

 穴が開くほどに鋸谷の事を見る白髪交じりの男。…その男の様子に、鋸谷は緊張で身を固まらせる。…少しの間の緊迫した空気。そののちに…その白髪交じりの男は、一つ息を吐く。


「…ただの世迷言だと思っていたが、どうやら…信じたほうがいいようだ。…わかった。信じてみよう。…そしてそのミスラウ軍とやらが襲撃を仕掛けてきた時は…身を挺してでも、この世界を守ってくれ。」


 白髪交じりの男からの、真剣な言葉。…それを聞いて、鋸谷は肩の荷が下りたかのように思えた。


「…!はい!がんばります!」


 こうして、鋸谷はサイエンタワールドにて…生活を始め、同時に不思議な模様のついた卵を授かることとなる。…この先、この生活はどうなるのだろうか。

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