堕落し行く科学の獣を止めるは一人の少年
鹿方剛助
Prologue~神からの頼み事~
皆さんは、侵略戦争と聞いてどっちの側につくだろうか。
侵略を仕掛けた側?それとも、侵略を仕掛けられた側?
中には戦争をしない、と宣言しておけば戦争を仕掛けられないだろう、という高をくくっている人もいるだろう。
だがどんなものにも、侵略の危険性は及んでいる。そう、たとえそれが作品だとしても。たとえそれが、一つの種族の生き物だとしても。
…これからお話するは、これから先に他の種族の生き物たちによって滅ぼされると予言された1種族の生き物を守るため、転生した青年が奮闘するお話。その青年も、最初はただの人間の青年だった。
***
東京都、日谷市。かつては幕府の徴募により結集された浪士隊の生まれの地とされていたその場所の、山がちな地形にある高校に、鋸谷竜平という少年は通っていた。
やや薄い黒のミディアムヘア。大人しさを醸し出しているかのようなその顔立ちの少年の耳に。茶色の髪の毛をした男子生徒の会話が聞こえてくる。
「ニュースで一つの国が隣国に侵略戦争を仕掛けたって聞くけどよ、その隣国は黙って侵略してきた国の侵略を受け入れればよくね?」
「ギャハハハ、それいい考えだな!さすがサバちゃん、頭さえてるぅー!」
「だろ?俺、キレてるだろ?」
腰巾着なのだろうか。やたら腰の低い男子生徒にヨイショされ、その茶髪の男子生徒はさらに調子に乗り…あげくは言ってはいけないことまで言ってしまっていた。
――侵略戦争というので、どちらが悪いかといえば。侵略をしてきたほうだと思うけど。…どんなものだって、やってきたほうが悪い。そう決まっていたはず。
鋸谷は悪いことはやってきたほうが悪い、ということを信じて生きてきたはずだった。…だが、見てきた物はどれもこれも、被害者とされる方が責め立てられるばかりだった。…まあ、その被害者とされていたほうが悪い、というケースもなかったわけではないのだが。…目についていたものの中で、何も悪くない被害者が叩かれるというケースのほうが多かったのである。
――なぜ救われるべき者たちが救われないのか。…本当に、疑問に思うばかりだ。
尚も、茶色の髪をした男子生徒が鼻高々に持論を展開する。やれバカラ大統領が侵略した方の国を支援しようとしたのは正しいだの、侵略された方の国は恨みを早く忘れろだの。聞く人によっては気分を害するような内容ばかりだ。
***
「ただいま。」
竜平の淡白な挨拶。それに、母親の言葉が返ってくる。
「お帰り、竜平。着替えてやることを済ませてきてね。」
「うん、わかった。」
竜平と同じ、黒い髪。それを三つ編みにし、眼鏡をかけた女性の言葉に返事を返した後に…竜平は自身の部屋で着替えを済ませ。宿題を進ませてゆく。
数学の問題、現代文の問題。さまざまな内容の宿題を進ませ。そして…それを終わらせた後に再びリビングへと戻りゆく。
それが、いつもの竜平にとっての生活だった。…それが変わったのは、ある日の事。
***
その日も竜平は茶髪の男子生徒の持論を聞き、辟易した後に…男子生徒と別れ道で分かれていった。…それから少ししたところにあるT字路。そこを渡ろうとしたその時…直進車の軽自動車に右折車がぶつかり。その直進車が運悪く竜平をはねてしまったのである。…さらに、悪い運というのは重なるもので…竜平は頭を石の部分にぶつけたのだが。そのあたりどころが悪かったがために気を失ったのである。…そののち、彼は夢を見た。その夢の中で、彼は…全身が金色の、頭を剃り上げた男性を見た。その男の表情はと言えば、微笑みを湛えているかのようなもの。…仏様のそれを思い浮かべるかのような男の姿を見て。竜平は困惑をした。
「貴方は…一体…?」
問いを投げかける竜平。そんな彼に、けしてその男は姿勢を崩さず。答えを返す。
「我は神。…とは言っても、そなた達が知る神とは違う神。…故に、我は全知全能ではない。できることと言えば…時を超え、その先で見たことを教えることと。力を与えることのみ。…そして、そなたの事を教えることもできる。」
そなたのことを教えることもできる。男から、その事を聞いた時。竜平は男に対して質問を投げかけた。
「…僕は、いったいどうなったっていうんですか?…あの時、ひどい痛みが襲ったあとに…夢の中に入ったので…。」
「…そうか。そなたは、己がどうなったのか、知らないのか。」
「…はい。」
現状、竜平は困惑しており、状況をうまく飲み込めていなかった。…そんな彼に、男は事実を伝える。
「簡単に言ってしまえば、そなたは死んだ。直進していた軽自動車に、ながら運転をしていた男性の乗っていた右折車がぶつかり。その直進していた軽自動車が速度を出しすぎてしまっていたために…そなたは頭を強く打ち付けすぎて、死んだ。」
男からの言葉を聞いた竜平は、さらに戸惑った。死んだ、というなら、これから先、どうすればいいと言うんだ。
戸惑っている彼に、その男は言葉を発する。
「…そなたには、やって欲しい事がある。」
男が言うには、こういうことだった。
サイエンスクリーチャーという生き物が平和に暮らすサイエンタワールドという世界に、そう遠くない未来にミスラウ軍という組織がマイクロアニマルという生き物たちを引き連れて襲撃を仕掛けてくるだろう、ということ。
サイエンスクリーチャーたちは、そのミスラウ軍という組織によって絶滅寸前にまで追い詰められてしまうことが決まってしまっていること。そして。
竜平には、そのサイエンスクリーチャーという生き物たちを絶滅寸前にまで追い詰められる運命から救ってほしい、ということ。
それらを男から伝えられても竜平はにわかには信じられなかった。…その竜平の心の内を読んでいたのか。男は持っていた樫の木の杖を使い。モニターのような形で竜平に映像を見せる。…それに映し出されていたのは、どこまでも広がる荒野のような場所だった。
アメリカの砂漠を思わせるような光景。それを見た竜平は、男に対して言葉を発する。
「これって、アメリカの荒野ですか?」
「いや。ミスラウ軍が襲撃を仕掛けてから半年がたったあとのサイエンタワールドだ。もっと言えば、ミスラウ軍が去ってから2週間ほどたったあとのサイエンタワールドだ。…そして、これから見せるのが、2年後のサイエンタワールドだ。」
そう言って、男は別の映像を見せた。そう、見せたはずだった。
しかしてその映像は…先ほどと同じ、荒野の写真。だからこそ、竜平は一つの問いを投げかける。
「…これ、2年後のサイエンタワールドですか?…まったく変わってないように見えますけど…」
「残念ながら、2年後のサイエンタワールドだ。…ミスラウ軍が、植物が生えないよう薬物を散布していったんだよ。」
男のその表情は、何処か悔しげなもの。それを見た後。竜平は…ある選択をした。
「分かりました。僕、その世界を救ってみようと思います。…ミスラウ軍という組織が、どんな力を持っているかは分かりませんが、やって見ます。」
「…ありがとう、男よ。…では、そなたに力を授けよう。…守るべきものを守るためになら発揮できる強い力と。サイエンタワールドの生き物達を世話するのに非常に役立つ便利な能力だ。そなたになら、きっとうまく扱えるだろう。」
男のその言葉の直後。竜平は体の奥底から力が湧き上がるのを感じ取り…そして、緑が豊かでのどかな平原と森の境目の場所に転移させられた。…それと同時に集まってくるのは、竜平の臍のあたりほどの大きさがある生き物たち。興味ありげに竜平のことを見上げるその生き物たちこそがサイエンスクリーチャーだと、竜平は後に知るのだった。
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