第二章 形態学的特徴
【基本形態】
ゴブリンの「基本形態」(最も一般的な表現型)の体格は以下の通りである。
雄の平均身長:一〇四・三センチメートル
雄の平均体重:三一・二キログラム
雄の脳容量:六八〇立方センチメートル
雌の平均身長:九七・八センチメートル
雌の平均体重:二六・七キログラム
雌の脳容量:六四〇立方センチメートル
体格は現生人類の約六〇パーセント程度だが、体重比での筋肉量は約一・四倍あり、同体重の人間より顕著に強い握力と跳躍力を示す。特に前腕の筋肉が発達しており、体重の三倍以上の物体にぶら下がることができる。
ただし、これはあくまで「基本形態」の数値である。後述する発達経路の分化により、個体によって体格は大きく異なる。
【骨格系】
頭蓋骨は前後に扁平で、眼窩が大きく発達している。眼窩容積は人間の約一・六倍あり、これが暗所視覚の優位性を支えている。下顎骨は頑強で、咬合力は人間の約二・三倍(平均八二〇ニュートン)を記録する。これは骨を砕いて骨髄を食べるための適応と考えられている。
脊柱は人間より椎骨が二つ少なく(腰椎四、胸椎一一)、これにより体幹の柔軟性が高い。狭い洞窟の隙間を這って移動する際、この柔軟性が大きな利点となる。四肢骨は短く太く、特に上腕骨と大腿骨の骨密度は人間の一・四倍に達する。
骨格系は発達経路によって大きく変化する。後述する「大型化経路」に入った個体では、骨密度がさらに上昇し、身長も大幅に増加する。
【外皮系】
皮膚の色は緑色から灰褐色まで個体差があり、これは生息環境への適応を反映している。森林地帯の個体群は緑色が強く、岩石地帯では灰色が優勢となる。
この体色はビリベルジン系色素によるもので、両生類に見られる色素と収斂進化した例である。カモフラージュ効果に加え、この色素には弱い抗菌作用があり、創傷治癒の促進に寄与している。
耳介は体長比で人間の約二・二倍の面積を持ち、可動域も広い。一八〇度以上の範囲の音源定位が可能で、暗闘での反応速度に寄与している。可聴域は一二ヘルツから三四キロヘルツと人間より広く、特に低周波数帯での感度が高い。
【感覚器官】
視覚について。網膜における桿体細胞の密度は人間の約四倍で、〇・〇〇一ルクス以下の照度でも行動可能である。月明かりのない夜の森の中でも、彼らにとっては薄暮程度の明るさに見えている。一方、錐体細胞は減少しており、色覚は二色型(人間の赤緑色盲に相当)である。瞳孔は縦長の楕円形で、光量変化への応答が極めて速い。
嗅覚について。嗅上皮の面積は人間の約三倍、嗅覚受容体遺伝子は約一一〇〇種(人間は約四〇〇種)を保持しており、イヌに匹敵する嗅覚能力を持つ。個体識別、食物の毒性判断、縄張りの認識など、社会生活の多くの場面で嗅覚が活用されている。
聴覚について。前述の通り優れた音源定位能力を持つ。加えて、地中の振動を感知する能力も報告されている。足裏に分布するパチニ小体(振動感覚受容器)の密度が人間の約五倍あり、数十メートル先の地下での動きを「聴く」ことができる。
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