第5話 📹私達に起きたこと

 悠真くんの話が終わったけど。

 なんとも言えない空気になって、私と葵ちゃんは顔を見合わせる。


「……悠真、アンタなんて話するの。よりによって呪いの話だなんて、嫌なこと思い出しちゃったじゃない」

「しょうがねーだろ、怪談のレパートリーを増やすためには、こういう話も必要だろ。……気にするのも、無理ないけどな」


 悠真くんも葵ちゃんも、嫌そうに顔をしかめてる。

 実を言うと私も今の話を聞いて、ある事を思い出していたの。

 ガチャガチャのカプセルや10円玉を使うのとは違うけど、呪いのせいで大変な目に遭った、最低最悪な出来事を……。


「そういえばこの手の話って、よく矛盾があるって言われるよね。事情を知ってるオサムくんは死んじゃったのに、どうしてこんな事が起きたってわかるんだって」

「だな。けどもしかしたらオサムが幽霊にでもなって、ネットに書き込んだり誰かの夢枕にたったりして、何があったのか話したのかもな。自分に起きたことを、知ってほしくて」

「そうね。それに伝わるはずのない話が伝わってるってのも、考えようによっては不気味よね」


 矛盾があるから嘘って言うのは簡単だけど、もしかしたら常識外方法で話が伝わったのかもしれない。

 もっとも、確かめようはないんだけどね。


「それにしても。そのオサムって人もバカよね。『人を呪わば穴二つ』って、知らなかったのかしら。本当に効果があったのなら、何かリスクがあるって考えなきゃ」

「そこまで深く考えていなかったんだろう。良い方法が見つかってラッキーくらいに、思ってたんじゃねーか。人間案外、都合の悪いことなんて、気づかないのかもな」


 呪いはかけられた方はもちろん、かけた方も不幸にしかねない。

 それに気づかずに、おいそれと手を出しちゃいけないよね。


 とにかく、悠真くんの話はこれで終わり。

 次は私の番なんだけど……。


「今度は美月だな。頼むぜ」


 悠真くんが私に、カメラを向ける。

 けど私はカメラじゃなくて悠真くん、それに葵ちゃんの顔を見て、口を開いた。


「ねえ、ちょっと思ったんだけど……私達が怪談朗読をはじめるきっかけになったあの事を、動画に残さない?」

「ん、どういうとこだ?」

「実は、前から考えてたの。怪談朗読の要領で、あの一連の出来事を話して、それを撮影して残しておくのもいいんじゃないかって。何があったかを記録として残すのが、怜くんや翔くんの供養になるような気がして……」


 提案しながら動画研究部の仲間だった、怜くんと翔くんの事を思い出す。

 どんな動画を作るか怜くんが企画して、みんなで協力しながら撮影して、パソコンが得意な翔くんが編集してたっけ。

 今の私達が動画研究部を続けられているのも、2人から教わったノウハウがあるから。

 撮るのは怪談朗読の動画ばっかりになっちゃってるけど、それでもあの経験がなければ今ほどうまくは出来ていなかったと思う。


 そんな2人に……ううん、私達5人に何があったのか、それを形として残しておきたい。


「どうする、悠真?」

「俺は構わねー。美月の言う通り、話した方が気持ちの整理にもなるかもしれねーしな。けど、あれを話すとなると長くなるぞ」


 悠真の言う通り、私達の身に起きた出来事を話したら、いつもの怪談朗読よりずっと時間がかかってしまう。

 全部いっぺんに喋るのは、大変かも。

 すると、葵ちゃんが提案してくる。


「それじゃあ、こういうのはどうかな? 最初は美月が話して、途中で私や悠真に交代するの。元々あれは私達全員が関わってるし、分担してみんなで話した方が良くない」

「賛成。怜兄や翔兄のことを話すなら、俺もやりてーもん」


 私も、反対する理由なんてない。

 そうだよね。あれは私達全員に関わることだから、みんなで共有したいよね。


 話がまとまって、私は自分に向けられたカメラの方を見る。


「じゃあまずは、私から話すね。私達が怪談朗読をすることになった理由、始まりのお話を……」

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