第9話 タイムリミットまであと2日

 タイムリミットまであと二日

 

 今日も炊事場での仕事だ。今日はカヤオが起こしに来る前に目が覚めたぞ。

 俺は身支度を整え、窓から外を眺める。昨日の晩、魔王の症状に関して考えたが、一向に原因がわからないままだ。今日は、魔王がどのように一日を過ごしているのか、聞いてみよう。

「おーい!サウナー起きてるか?」

 カヤオが迎えにきた。扉をあけると今日もカヤオはやる気満々と言った感じだ。

「おはよう。」

「おはようサウナー。今日も美味い飯作ろうぜ!」

「すごいモチベーションだな。昨日の疲れは残ってないか?」

 カヤオは何を聞いているんだ?というような顔をしている。

「昨日の作業くらいだったら、どうってことないさ。戦闘に送り込まれた時は一日でへとへとだったけどな。やりたい仕事っていうだけでこんなに違うとは思わなかった。」

 俺は昨日の、マーサさんの言葉を思い出していた。

「もしかして、カヤオのように本当は別の仕事をしたい魔物って多いんじゃないか?マーサさんも、他の魔物の愚痴を聞いたことがあると言ってた。」

 カヤオはあたりに誰もいないことを確認して俺に耳打ちする。

「ここだけの話、男は戦闘に、女は雑用にという分担は古くからの流れだ。誰も変えようとしてこなかった。が、俺のように配属を変えてほしい魔物は俺の知る限り、そこそこの人数がいる。女の方は知らないけど。」

「なんで、誰も声をあげないんだ?」

「魔王様に恩義があるからさ。昨日ジャスミンにも話を聞いていたようだけど、皆、魔王様を慕っている。魔王様の野望のためならと、従っている。ただ、魔物全体が戦闘狂ではない。違うやり方で貢献できるなら、その方がいいのかもしれない。」

 魔王の野望、世界を掌握することは本当に争い事でしか得られないのか?

「魔王様は、普段どういうふうに過ごしているんだ?昨日は、食堂に姿を現さなかったが。」

「魔王様は普段から王座にお座りになられている。外に出た魔物の動きや、次の作戦を考え準備に勤しまれている。食事は王座で食べるんだ。」

 ということは、一日中座りっぱなしということか。

「最近の魔王様の様子でおかしいところはないか?」

 カヤオはんーと悩んでいる。

「俺も毎日顔を合わせるわけではないからな。何かあったかな。」

 俺も会社員時代は、社長と毎日顔を合わせているわけではなかった。これだけ多くの魔物がいるのだ。一ヶ月くらい顔をあわせない魔物がいても不思議ない。

「あ、そういえば。」

 何か思い出したのか?

「昨日の晩、俺トイレに起きたんだ。そのときに魔王様の部屋の前を通ったんだけど、扉が少し開いていて中が見えたんだ。盗み見する気はなかったんだぞ?」

「そんなこと疑ってないよ。何を見たんだ?」

「魔王様、足を摩っていたんだよ。ほら、俺ってお婆ちゃんっ子だろ?おばあちゃんが足が痛い時みたいにさすってたんだ。」

 足をさすっていた?昨日ジャスミンから聞いた胸の痛みと関連しているのか?

「でも魔王様は一日座ってるんだろう?足が痛くなるはずないじゃないか。」

「そうだよな。なんだったんだろう?」

 カヤオは首を傾げている。

「俺には詳しいことはわからないけど、何かわかったら教えてくれよ。」

「そうだな。俺の命もかかってる。よく考えるよ。」

 俺たちは会話もそこそこに、食堂へと急いだ。また、慌ただしい一日が始まるぞ。

 

 食堂に着くと慌ただしく、マーサさんをはじめとする魔物が働いていた。

「おはようございます。」

「おはようサウナー。悪いけど、今日は配膳の方に入ってもらえる?体調不良で一人抜けちまって、朝からてんやわんやだよ。」

「わかりました。配膳って何をすれば?」

「できた料理を渡してくれるだけでいい。順番通りにとりに来るから、順番を間違えることもないだろう。頼んだよ。」

 受け渡しカウンターの方に目をやると、魔物たちが一列になって料理を待っている。なるほど、チェーン店のうどん屋方式か。

 配膳をしていると、想像よりたくさんの魔物たちが城にいることがわかった。魔法使い、スライム、ゴーレム、獣用の餌を一緒に持って行ったのは、獣使いだろう。朝食の配膳が終わり、昼食の配膳も同じ要領でこなしていく。するとマーサさんから声がかかる。

「サウナー!次出すのは魔王様用だから、ジャスミンさんに渡してちょうだい。」

 他の魔物より数段豪華なプレートができた。目の前にジャスミンが来たので受け渡す。ジャスミンはコップに入った水をプレートの上に置くと、「今日は、配膳係か?」と話しかけてきた。

「そうなんだ。欠員が出てな。その食事、魔王様のところに行くんだろ?」

「そうだ。魔王様は多忙ゆえ、こうして王座まで運んでいる。」

「その食事量だと、水が少なくないか?大きいポットを用意しようか?」

「いや、これでいい。魔王様は普段から水をあまり飲まないのだ。お手洗いで時間を使いたくないと仰られてな。」

 こういう勤勉なところも魔物たちからの信頼されている証だろう。

「わかった。足りなくなったら言ってくれ。」

「そうさせてもらおう。ありがとう。」

 そう言って、ジャスミンはプレートを持っていった。

 しかし、トイレにも行けないほど魔王の仕事も忙しいのか。俺はそんなに長時間座っているのなんて、飛行機にでも乗ってる時くらいだ。

 

 ん?

 飛行機という単語が妙に頭に引っかかった。なんでこの言葉が引っかかる?俺が飛行機に乗ったのは、東京から沖縄に行くときの約三時間。時間の問題か?

 いや、違う。もっと根本の・・・

 

 あ、そうか。

 足が痛くてさする動き。胸の痛み。どう考えても少なすぎる水分。

 

 そこから導き出される答えは一つだった。

 もし俺の予想が当たっているなら、俺は解決策を知っているかもしれない。いや、もし間違っていたとしても、このままだと何もせず食われるのが運命。ダメもとでやってみるしかない。

 

 俺は、一つの可能性に賭けた。

 あとは準備のみ。

 まず声をかけるのは、「あの人」だ。

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魔王軍のおもてなし~転生サウナー、魔王城で癒やし施設を開業する~ 待人 梢 @Machi_bito_kozu

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