第7話 タイムリミットまであと3日
「使ってくださいって・・・・?」
突然現れた女の子に、そんなことを言われて、何が起こったのか理解できない。
「あわわ・・・すいません。」
女の子はまた、深く頭を下げながら謝罪した。
「私の名前はユーラン。魔王四天王の一人。炎のユーランです。」
神やカヤオから四天王の名前は聞いていたが、急に部屋に来るなんて聞いていないぞ。
「し・・・四天王が・・・急になんだ?」
魔王の気が変わって、俺を殺しにきたのか?
「あの・・・危害を加えるつもりはありません。誤解しないでください。」
「誤解するなと言われても、急に出てきて心なんか開けないぞ。」
「そうですよね。私はあなたのことを見ていたけど、あなたは私と今初めて会いましたもんね。」
「待て、お前俺のことを見ていたのか?」
一体いつから見られていた?全く身に覚えがないぞ。
「はい。河原で焚き火をしてらしたでしょう?私、ここいらの焚き火から周辺のビジョンを見ることができるんです。何故なら私、四天王なので!あなたが、カヤオを助けているところも、見せていただきました。」
焚き火から景色を見る?占い師の持つ水晶玉みたいなものだろうか?
「襲撃の時に、仲間の何人かと離れてしまったので、戦火にアクセスして仲間を探していました。その時、あなたの焚き火から、カヤオを介抱してくれているところを見ました。魔王様とのやりとりもこっそり拝見し、ランプを通じてお礼にあがりました。」
「炎を移動とか、そんなこともできるのか?」
俺の質問を、待ってましたとばかりに目を輝かせて答える。
「はい!何故なら私、四天王なので!」
「なんでそこだけ、嬉しそうなんだ?」
「えへへ・・・四天王になって日が浅いので、嬉しくてつい。」
頭をかきながら、照れくさそうに笑う。
「それはそうと、カヤオを介抱している時に、出てきてくれてもよかったんじゃないか?そうしてくれれば、俺が村から追放されなくても、直接魔王城にくることが来たのに。」
「申し訳ありません。ビジョンを見ることはできるのですが、移動は城内しかできないのです。」
「四天王なのに?」
「う・・・四天王なのに・・・です。」
残念そうな顔をしているユーラン。ちょっとした戯れあいだが、すごくいけないことをしてしまったみたいだ。
「ところで、私を使ってくださいっていうのは・・・?」
「あ!そうでしたそうでした。」
コホンと咳き込む真似をして
「サウナー様!カヤオを介抱した優しい心!カヤオに持たせてくれた見たこともない食べ物!私、あなたにとても興味がありますわ!そこで、明日からの炊事場の火に私の魔力を混ぜておきます。どんな料理も、最高の状態で仕上げてくれるでしょう!」
「あ、ありがとう。そんなことしても、お前に何もメリットがないぞ?」
「いいえ!いいえ、知らない価値観に知らないお料理、きっと私の知らないことをあなたはきっと、たくさん知っているはず。その知識を、どうか私に授けてください。その報酬として、城内にある火はあなたの役に立つでしょう。」
「そういうことならば、ありがたく使わせてもらおう。炊事場に立つと言っても、料理の経験は人並みだから、不安だったんだ。」
「はい!思う存分使ってください。その代わり、たまにこうやってお部屋にお邪魔するので、私の知らないことを教えてください。」
前いた世界では、俺を慕ってくれる人なんかいなかった。どこかくすぐったい気もするが、とても嬉しくもある。
「ああ、わかった。待っているよ。」
「ふふ。それではおやすみなさい。あなたの役割が見つかりますように。」
そう言って、ユーランの体を炎が包んだかと思ったら、一瞬にして姿は消えた。
俺はベッドに入り、今日のことを思い返していた。大変だったが、一日とても楽しかったかもしれない。毎日を繰り返すだけの生活ではなく、明日から目まぐるしい生活が始まるぞ。その期待に胸を躍らせて、俺は眠りについた。
タイムリミットまであと三日
「サウナー!起きろー!迎えに来たぞ!」
外からカヤオの声がする。迎えにくる前に起きるつもりだったが、ぐっすり眠ってしまったようだ。
「今出るから、少し待っていてくれ!」
簡単に着替えを済ませて扉を開ける。念願の炊事場勤務が始まるようで、カヤオはどこか嬉しそうだ。
「俺、楽しみで昨日何度も台所を覗きにいっちまった。」
「よっぽど楽しみだったんだな。」
「ああ!女の職場だが、俺が今まで食ってきた美味いもの、お前が食ってきた美味いもの、全部作ってこの城の魔物たち、全員を満足させてやる!」
カヤオは小さくガッツポーズしてやる気満々だ。
「サウナーはどうだ?」
「俺は、初めての仕事だから緊張の方が勝ってるよ。ここで何か掴めないと、食われちまうからな。」
そう、俺は今日から三日間で自分の役割を見つけないと、食われてしまう。その後、どこに行くかわからない恐怖感の方が強い。
「サウナーならきっと大丈夫だ。」
「そう言ってくれるだけで力強いよ。」
俺はいったん、生きるか死ぬかの瀬戸際を忘れ、目の前の仕事に集中することに決めた。
「本日から、炊事場で働くカヤオです!」
「同じく、サウナーです!」
二人で炊事長に挨拶をする。手が六本ある大きな蜘蛛の魔物が炊事長だ。
「二人ともよくきてくれた!男がここで働くのは初めてのことだ。力仕事中心に頑張ってもらうから、へばらないようにね!」
とても明るく迎えてくれる料理長。俺たちに声をかけながら、複数の腕で作業を進めている。
「私のことは、マーサさんと呼んでちょうだい!」
マーサさんは、下町の食堂に勤めるおばちゃんのような、気概の良さを持っている。ここなら楽しく働けそうだ。
「もうすぐしたら、朝飯を食いにたくさんの魔物が来るよ!さあ!働いとくれ!男二人は早速力仕事だ。そこの大鍋で炒め物だよ!」
そこからは、まるで戦場のようだった。次々に食材が鍋の放り込まれていく。ユーランの援助があり、幸いにも焦がすこともなく全ての料理を仕上げられた。カヤオも満足そうにしているところを見ると、俺と同じように順調に調理できたんだろう。
「あんた達、初日なのに上出来だよ。」
マーサさんがお茶を持ってきてくれた。
「いやー、なかなかハードでしたけど楽しく働けました。」
「何言ってるんだい!朝飯が終わっただけだから、もうすぐしたら昼飯の準備、それが終われば夕飯の準備だよ。まだまだ、へばるんじゃないよ!」
マーサさんが背中をバンッと叩いて気合を入れてくる。正直、俺はへとへとだが、カヤオはまだまだやる気満々だ。
「マーサさん!俺、この仕事好きです!俺の料理でみんなが笑顔になる!最高の職場です!」
カヤオは熱量高くマーサさんに話しかける。
「そうかい?そう言ってくれると嬉しいね。ここは女の職場だから、女だからっていう理由で働いてる奴も少なくない。」
性別で働き方が固定される。日本よりそこの価値観は固いようだ。
「女でも、やりたい仕事が別にあるものもいいる。」
「女でも戦いたい奴がいるのか?」
「いいや。勘違いしているかもしれないけれど、魔物ってやつはそんなに戦いは望んではいない。魔王様の野望を叶えるための手段が略奪なのさ。」
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