第6話 救世主と四天王
突然開け放たれた扉の音に、室内が静まり返る。
「お待ちください。魔王様。」
「魔王様は今、謁見中だ。突然飛び込んできて、無礼だと思わぬか。」
「申し訳ございません。しかし、どうしてもお耳に入れたいことが」
振り返り、後ろで繰り広げられる様子をみてみると、見覚えのある魔物が
「カヤオ?カヤオじゃないか?」
「やはり、連れて来られたのはサウナーだったか!よかった間に合って。」
見知らぬ場所で知り合いにあった時の安心感に包まれ、緊張で固まっていた心が、少しだけほぐれた。
「お前の知り合いか?」
魔王がカヤオに聞く。
「はい、先ほどご報告させていただいた転生者、サウナーとはこのもの。怪我をして動けないところを、助けていただいたばかりか、食糧まで分け与えてくれました。魔王様に献上したカップ麺もこの者から。」
カップ麺という名前が出た途端、魔王の顔が綻んだ。
「おお!あの美味な料理を持たせてくれたのは、お前であったか。サウナーと言ったな。仲間の介抱と合わせて礼を言わせてくれ。」
「とりあえず、縄を解いてくれないか?」
「わかった。おい、縄を解いて差し上げろ。」
魔王の命令を受け、使いの魔物が俺の縄を解いていく。ギルドで捕まってから縄で縛られっぱなしだったから、体が固まってしまった。
「縄を解いてくれてありがとう。」
「こちらも、ひどい扱いをしてしまった。どうか許してほしい。」
意外と話のわかる相手なのかもしれない。
「時に、サウナーよ。なぜお前が生贄に選ばれた?転生してきて日が浅いだろうに。」
「村のギルドでスキルを聞かれた時に、スキルがないと答えたら、問答無用で縛られてここに連れて来られたんだ。別に、人を殺したり家に火をつけたりなんかしていない。」
「ふむ、人間も酷なものだな。」
冷酷な判別を聞いて、魔王が気の毒そうな顔をしている。魔物から見ても褒められたシステムではないのだろう。
「そうなんだ。荷物も村に置いて来てしまったし、本当に一文なしだ。そうだ魔王様。俺をここに置いてくれないか?」
「置いてやりたい気持ちは山々だが、いかんせんうちも余裕がなくてな。ただでおいてはおけんのだ。」
カヤオを助けた恩義で衣食住を確保できると思ったが、現実はそうも甘くはない。働かざるもの食うべからずは、こっちの世界でも健在のようだ。
「スキルがないことはわかった。他に魔法は使えるか?」
「魔法?」
「もしかして、魔法も使えないのか?」
「ああ、残念だが魔法の存在も今聞いたところだ。」
「う〜む・・・」
魔王様も頭を抱えてしまった。
「魔王様、一旦俺のところにサウナーを任せてはくださいませんか。炊事の手伝いくらいはできるでしょう。」
カヤオがナイスパスを出してくれた。
「そういえば、お前は炊事担当に移ったのだったな。」
「はい、サウナーがカップ麺をくれなかったら、私は利用価値もなく私は殺されていたでしょう。私はまだサウナーに恩義を返せてはいません。」
「わかった。サウナーよ。しばらくはカヤオと共に行動するがよい。しかし、条件をつける。三日のうちに、自分の仕事を見つけ私に示してみせよ。」
「もし、その間に何もみつからなかったら?」
「その場合は食わせてもらう。」
「え・・・?」
「三日も猶予があれば、サウナーへの恩義も返せるだろう。三日間余生を楽しむか、この三日で新らしく生きる道を探すのか。よく考えてすごしてくれ。」
恩義を理由にダラダラと過ごさせてもらおうと思ったが、思ったより時間はなさそうだ。
魔王はそこまでいうと、椅子から立ち上がり部屋の外に出ていく。歩いている時、少しだけ顔を歪めたのを俺は見逃さなかった。魔王が出ていくと、魔王のそばにいた魔物がこちらに近づいてくる。俺の腰の高さほどの身長、真っ黒なローブを身にまとい、身長より高い杖を携えている。神が言っていた、幻術使いはこいつか?
「客人よ。明日から三日間は、カヤオと行動を共にしながら、己の役割を見つけ出せ。」
「もし、俺が変な気を起こしてここから逃げ出したら?」
「好きにするが良いが、このあたりの魔物は強いぞ。武器も魔法もなく、人一人が一晩生き残れるほど甘くはない。」
役割を見つけられなかった時の逃走経路を確認し酔うと思ったのだが、どのみち死ぬことになりそうだ。
「わかった、せいぜい頑張らせてもらうよ。」
「部屋の案内はカヤオに就かせよう。」
「承知しました。行こう、サウナー。」
カヤオに連れて来られた部屋は、シングルベッドと机が一つ。ランプが灯り暖かな雰囲気がある。
「よかったな。食われなくて。」
カヤオが荷解きを手伝いながらいう。
「ああ、なんとか命が繋がったよ。人助けはしておくもんだな。」
「お前の優しい気持ちが繋いだ明日だ。お前がここで暮らせるように、俺も精一杯手伝わせてもらうよ。」
「ありがとう。明日は、どんなことをするんだ?」
カヤオと行動を共にするということは、炊事場の手伝いをしろということだ。飲食店の勤務経験はないぞ。
「俺も今日配属になったばかりだからな。詳しいことはわからないが、魔王城に住む魔物たちの飯を作るのが仕事だ。明日は朝5時から準備だから起こしにくる。」
「ああ、準備しておく。おやすみ。」
カヤオが部屋に戻り、久しぶりに一人の時間が訪れたような気がする。思えば色々なことがあった。目が覚めたら神様がいて、転生したかと思えば、怪我をしたゴブリンを助け、やっと村についたかと思ったら、追放される。
俺の人生史上、一番忙しい日だったかもしれない。
それはそうと、明日から一体どうしよう。炊事場の仕事なんて、想像するにハードワークそうだから働くことなんてできそうにない。
俺はサウナに入れて暮らせればそれでいいのだ。それ以外のことはできるだけしたくはない。
何かいい方法はないか・・・と考えているとどこからか声が聞こえる気がする。気のせいか?
「・・・・・・・・の」
いや、やっぱり聞こえるな?
「あの・・・ここです・・・ここ」
声のする方に目をやっても、あるのは机とランプだけ。人の姿はどこにも見当たらない。
「ここです!」
声が大きくなったと思ったら、ランプの炎が広がり、その中から真っ赤なドレスに身を包んだ、15・6歳くらいの女の子が出てきた。赤い髪を一つの大きなおさげにして、おとなしそうな雰囲気が漂っている。
「うお!誰だ!?なんだ!?」
「あの!驚かせてしまってすいません。」
その子は申し訳なさそうに、深々と頭を下げてから、真っ直ぐに俺を見てこういった。
「あの、私を使ってください」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます