第4話 ワースの村へ
「動くな。両手をあげてゆっくりと振り返れ。武器を持とうとするな。変な気を起こしたら、次は当てる。」
俺は言われた通りに振り返る。すると、ロングスカートに身を包んだ、ショートボブの女が弓矢を構えていた。
「私の名前はコネット。ノーチの長、トウゴの娘。先ほどゴブリンと親しげに話していたな?人間に見えるが、魔王軍の手下か?」
以前として弓矢を下す気配がない。女騎士には見えないところから、戦闘をするつもりではなく、何かの拍子に俺たちの姿を見かけたんだろう。
「俺はサウナー。今日、こっちに転生させられたものだ。先ほどのゴブリンは、昼にあった襲撃の際、怪我をしていたところを介抱していた。君たちと争うつもりはない。」
「本当か?念の為、武器を地面に置け。」
「武器なんか持っていない。そんなに心配ならば、今まとめていた荷物を全て確かめてもらって構わない」
「そう言うなら、確認させて貰おう。」
そう言って、弓はおろさずジリジリとコネットが近づいてくる。
「私が確認するまで、腕はおろすなよ。」
そう言って、俺のリュックから荷物が広げられていく。サウナテント、宿泊用テント、着替え、食器類、先ほどカップ麺を全て渡してしまったので、食料は無しだ。
「本当に武器はないようだな。疑って悪かった。」
コネットが荷物を全て広げていう。
「転生して来たと言ったな。どこから来た?」
「日本からだ。」
「私たちの村にくる人間は、その『ニホン』という場所からよく来る。その名前が出てきたということは、本当に転生してきたと見て間違い無いだろう。」
どうやら納得してくれようだ。
「腕を下ろしても構わないか?」
「ああ、すまなかった。」
俺は腕を下げる。コネットも弓を下げている。どうやら誤解はとけたようだ。
「いいんだ。昼間襲撃があったんだろう?さっきのゴブリンから聞いたよ。」
「ああ、そのせいもあり今ここらへん一帯では、残党狩りが行われている。君も、体一つではまた疑われてしまう。どうだろう。私と共に村に来ないか?」
それは、願ったり叶ったりだ。
「そうしてくれると助かる。今から村に向かおうと思っていたところだ。」
「ならば、すぐに立とう。夜になると、魔物たちが動き始めるぞ。」
俺は、荷物を再度まとめてコネットについていくことにした。
「コネットと言ったな?残党狩りがあると言ったが、そんな軽装備で大丈夫なのか?」
コネットはロングスカートに白いブラウス。それとは不釣り合いなくらい、大きな弓を担いでいる。
「お父様の頼みで、隣町に用事があってな。客先に出向く手前、鎧というわけにもいかんのだ。もっとも、私の弓の腕前にかかれば、残党などひとたまりもないがな。」
コネットはかなり弓に自信がありそうだった。
「他に街があるのか?」
「ああ、小さい村だが点在している。その中でもワースが一番大きく、商いなどもまとまっている都合、一番賑わっている。ギルドもあるから行って見るといい。」
「ああ、そうさせてもらう。先ほど、ゴブリンから強い用心棒を雇ったと聞いた。そんなに強いのか?」
「ああ、剣の腕前は確かなものだ。どの兵士よりも強く人望もある。ただ、お父様はじめ、村の人間は心を許しすぎている。最近では、政治にも首を突っ込み始めているので、私は少々警戒している。」
先ほどの、警戒具合から見てもコネットはかなり用心深いようだ。
「その用心棒、名前は?」
「ムサシと名乗っていた。」
名前からして、大剣豪って感じだ。
「お前もワースに訪れるからには、顔を合わせるだろう。ほら、村が見えてきたぞ。」
村に入ると、襲撃があったとは思えないほど明るく、建物の中からは光が漏れている。
「ありがとう、助かったよ。」
「いいんだ。あそこがギルドだよ。魔物退治のミッションなどが貼ってある。転生者は魔王軍討伐に向けてスキル鑑定をし、魔物退治のミッションをこなしながら、腕を磨きつつきたる魔王軍との対戦に備えている。」
「わかった。行ってみるよ。」
「ギルドに行ったら、私を訪ねて来てくれ。先ほどの無礼の詫びも兼ねて、夕飯を振る舞わせてくれ。」
「何から何までありがとう。それじゃ、また後で。」
コネットを見送り、ギルドの扉を目指す。賑やかに見えても、あちらこちらは壊れている所を見ると、それなりに激しい戦闘があったのだろう。だが、ギルドの中から楽しそうな声が聞こえてくる様子から、町の損害より今日の勝利のお祭りムードの方が強いようだ。
扉を開くと町酒場のような室内の正面に、受付があるようだ。先客たちが一瞬目線をこちらに向けたように見えたが、すぐに談笑へと戻っていく。ひとまずカウンターに行ってみよう。
「こんばんは。受付はここでいいのかな?」
若いロングヘアの女性が座っている。
「こんばんは。ワースのギルドへようこそ。こちらは初めてですか?」
「ああ、今日こっちの世界に来たばかりなんだ。」
「転生者様ですね。そういう方は、皆様スキルをお持ちになられています。こちらでは、スキル登録と、地域開発、魔王討伐パーティなどのデータベース登録をしております。ご自身のスキルは把握されていますか?」
「特別申請とやらで、スキルは何もない。手ぶらでこっちにとばされてしまった。」
「え・・・・?」
その瞬間に、ギルド内が静まり返ったのがわかった。
「えっと、この村に特別申請できた人はいないって聞いてたんだけど、そんなにまずかった?」
「いえ、その。ノースキルの方は力仕事などで働き口はあったんですが・・・。」
受付嬢は気まずそうに続ける。
「先日、長であるトウゴ様のご意向で。ノースキルの者は魔王軍への、供物にすると決まりまして・・・」
「え?」
「なので、あなた様はトウゴ様にご連絡させていただいたのち、魔王軍へと引き渡されます。」
家畜コースから抜け出したと思ったら、結局魔王軍に引き渡されるの?俺?
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