第2話 初めてのサウナ

 気がつくと俺は、河原にいた。さっきまでの景色と違い、太陽が空に浮かび、清らかな川は流れ、鳥が鳴いている。

 最後に、色々詰め込まれたな。えーと、まず村に行くこと、スキルなしは初めてだから、村人の反応がわからないこと、火とか水とか使う四天王がいて、幻術使いがいて、そのトップが魔王だということ。神め、デメリットを説明したら、また駄々をこねると思って、一気に説明したな。

 俺はこれからのことを考えた。とりあえず、村に行ってみるのが先だろう。だが、ムズムズしている。俺のサウナ浴が悲鳴をあげている。

「とりあえず、サウナにするか。」

 足元を見ると、登山道具が転がっていた。その中から、まずはサウナテントを取り出し、地面に広げる。支柱を組み立て、幕を張り、中に本来ならば中にストーブを設置するのだが・・・

「河原だし、やってみるか。」

 俺は、落ちている石をテントのなかで積み上げた。結構な重労働だが、1メートルほどの石の塔を作る。近くの雑木林でとってきた枯れ木を組み立て、その下に着火剤火を置いて火をつける。パチパチと、音を立てて燃える石。一度やってみたかったんだ。天然の石でロウリュを。石が焼けるまで、焚き火でもして待っていよう。

 テントの外に出て、先ほど拾ってきた枯れ木に目をやると、もうだいぶ少なくなっていた。

「仕方がない、もう一度拾いに行くか。どうせ、時間なら山ほどあるんだ。」

 雑木林の中は、入り組んでいるが見覚えのある木ばかりだった。どうやら、気候や生態系は日本と似たようなものなのだろう。熱帯の砂漠地帯に飛ばされなくてよかった。

 手頃な枯れ木を小脇に抱え、そろそろ帰ろうかという時、草むらの向こうに影が見える。

 人か!?

 ガサゴソと草むらを分け行って入っていくと、人が倒れている。

「どうした!大丈夫か!?」

 近づいて体を起こすと、俺は驚いた。

 体は大柄の男のようだが、鼻が豚のように潰れている。

「に・・・人間・・・」

 喋った。どうやら言葉は通じるようだ。

「大丈夫か?怪我しているじゃないか」

 豚人間の体は、ところどころ痣がある。誰かに暴行されたようだ。

「と・・・トドメを刺しにきたのか・・・いいか、ここで俺を殺しても、必ずユーラン様がお前たちの村を、火の海に変えてくださる。」

「誰だそいつは?いいから黙っていろ。重症だ。立てるか?」 

「何を・・・?」

 豚人間は意外そうな顔をしている。怪我してる人がいたら、放置できないだろう。

「手当てをするんだ。さあ。」

「う・・・ありがたい。お言葉に甘えさせてらもう。」 

 豚人間に肩を貸し、歩き始める。片脇に枯れ枝を持っているので、うまく草を払いきれなく、歩きにくいが仕方がない。

 河原に着くと、豚人間を座らせて持ってきた薪に火をつける。パチパチと音を立てて燃える枝。荷物の中から鍋を取り出し、川の水を汲んで火にかけた。

「なぜ、俺を助ける。お前たちの村を襲った直後なんだぞ。」

「俺はまだ、村の人間じゃない。だからお前に恨みはない。」

「そうか、旅の者か。」

「そんなところだ。ところでなぜあんなところで倒れていた。」

「先ほども言ったが、人間の村を襲撃したんだ。しかし、最近新しい用心棒がいてな。そいつがすこぶる強い。我々の党首、炎のユーラン様がいて互角だが、勢いに乗った村人にこっぴどくやられてしまった。」

「なるほど。返り討ちにあったというわけか。ひとまず、こんなものしか無いが飯でも食ってゆっくりして行ったらいい。」

 火にかけた鍋の中で、水が沸騰している。荷物の中からカップ麺をふたつ取り出し、お湯を入れる。俺が味噌で、豚人間は醤油でいいだろう。

「なんだそれは?初めてみる食い物だ。」

「カップラーメンと言ってな。もう少し経てば、食べられるはずだ。それより、この世界のことを教えてくれ。こっちに来たばかりなんだ。」

 豚人間は驚いた顔をしている。

「お前、その口ぶりからすると転生者か?」

「ああ、本当に来たばかりなんだ。そのカップ麺も転生前から持ち込んだものだ。」

「そうか。ここはメッセ地方。ここから東にワースの村がある。我々は、このメッセ地方を支配下に置くため、炎のユーラン様と共に侵略を続けている。ただ、ワースの村には用心棒のほかに、転生者が多くいてな。それぞれ山岳に長けたスキル持ちが集まっているのだ。」

 なるほど、神から説明を受けた通りだ。。

「大体のことはわかった。ありがとう。そろそろラーメンが食べられるはずだ。」

「そうか。ではいただこう。」

 カップ麺の蓋を開けると、あたりにいい匂いが立ち込める。完走したえびと卵はプリプリに戻り、謎肉と共に麺の彩りを飾る。

「これで食べてくれ。」

 カトラリーから折りたたみフォークを取り出し、豚人間に渡す。

「こうやって啜って食べるんだ。」

 俺は、箸で持ち上げ麺をずるずると啜ってみせた。それをみて、フォークで麺を持ち上げて、豚人間が啜り上げる。

「ん!なんだこれは!うまいな!」

「そうだろう。外で食べるカップ麺は、家で食べるより三倍美味いんだ。」

「スープ料理かと思ったが、この麺がメインなんだな。」

「小麦で作ってるんだ。俺のいた世界にはこういう麺料理がたくさんあったんだ。こっちは味が違うけど、食うか?」

 あっという間に、醤油ラーメンを食べた豚人間は、まだ食い足りなそうだ。

「いいのか?」

「ああ、あまり腹が減ってなくてな。食べかけて悪いが。残しても仕方ないし食べてくれ。」

 そういうと、豚人間は味噌ラーメンを受け取り、またずるずると啜り始める。

「こっちもうんまいな!さっきのと比べて、味が濃厚だ。」

「さっきのは醤油でそっちが味噌。ほかにも塩や、魚から作るものもある。」

 豚骨もあるが、それは言わないほうがいい気がする。

「いやあ、うまかった。ご馳走様。」

 お粗末様でした。

「さて、本当は傷の手当てもしてやりたいところだが、あいにく薬は持っていなくてな。」

「いや、体を休ませてもらっただけでも十分だ。」

「そう言ってもらえると助かる。そうだ!」

 俺は、サウナ内の温度を確かめに行った。テントを開くと、むわっとした空気が立ち込めている。体感90度といったところだろう。ベストコンディションだ。できるだけ、温度を逃さないように、一酸化炭素を逃しながら様子を見る。

「一緒にサウナに入って行くといい。体の疲れが吹き飛ぶぞ」

「なんだそれは?」

「俺の世界にあった、素晴らしい入浴方法だ。」

「風呂か!では湯を沸かそう!」

「いや、準備はもうできている。」

 不思議そうに辺りを見回す豚人間。

「どこにも湯なんて湧いていないじゃないか。

 」

「今日の風呂はこれだ!」

「おお、この中で湯が沸いているのか!」

 説明するより実際に入ってもらたほうが、話も早そうだ。

「よし、じゃあ服を脱いで入ってくれ」

 俺は、カップに川の水を汲み、服を脱いでテントの中に入る。中々の高温。カラカラに乾燥したドライサウナ。

 

 さあ、始まるぞ。

 異世界最初の極上サウナが。

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