実話怪談「雨女」

常陸 花折

雨女

 私はかなりの雨女だ。物心ついた時からずっと自分が傘を持っていない時は降る。持っている時は降らないということが良くある。

 イベントごとでも悪天候ばかりだった。


 小学4年生のお泊りでは台風だったし、5年生のスキー合宿はリフトが止まるほどの猛吹雪、6年生の修学旅行は1m先も見えないほどの濃霧。

 中学校、高校の修学旅行も、大学のサークル合宿も1日も雨が降らないことはなかった。

 中にはお前が寝てる時だけ晴れてたよ、という時すらあった。


 最近では、友人間での読書合宿の際も雨を降らせてしまうし、去年は推しのツアー4ヶ所を全部雨にした上に、飛行機を欠航にして推しもろとも帰れなくなった。東京ドイツ村に花火を見に行ったら花火の時間だけ雨が降った。


 そんな中で、私は人生で一度だけ明確に「雨に追いかけられた」ことがある。

 これはその話。


 これも大学のサークル関連の話だ。私の大学は池袋から近いのもあり埼玉から通っている人がそこそこ多かった。そして、仏教学科があったため寺出身の人も多かった。

 そんな中で、埼玉のとある寺出身の先輩が百物語をしようと言って家に招いてくれたことがあった。

 みんなは早めに先輩宅へ向かっていたのだが、私だけは昼間~夜にどうしても予定があり、東武東上線の終電で向かうことをあらかじめ伝えていたのだが。


「先輩、駅着きました~」

「ごめん! 俺ら全員酒飲んじった! タクシー代出すからタクシー乗ってきて!」


 百物語やるのに飲酒しながらやってるんかい、と思いながらタクシーを探すとちょうど一台いた。東武東上線は終電逃しをしてしまうと大変なことが多いから、駅前にちゃんとタクシーがいることが多い。


 駅前はこの時小雨だったと思う。

 こんな真夜中に乗って来て、「〇〇寺まで」という傘も持ってない女を乗せるのは、タクシー運転手も怖かっただろう。行き先を二回聞かれた。


 先輩の実家である寺は少し山の上にあるからか、途中から雨は降らなくなった。運転手さんもワイパーを止めて走っていた。


「あ、ここで良いです」

「え? ここで良いんですか?」


 運転手さんが驚くのも無理はない。いつも私は先輩から家に招かれたときは、寺の入り口ではなく、居住部分の玄関から入っていたため周りからは寺の裏の駐車場にしか見えない部分から入っていた。

 表から入ると檀家さんの墓を通らないといけないし、いつもは車で送ってもらっていたし、何よりそこからが一番寺の中の「住宅」の玄関が近いのだ。

 お金を払ってタクシーを降りた瞬間、後ろから気配を感じた。


 大き目のラグマットくらいの雨雲が私を追いかけて来ていた。

 ゲリラ豪雨の小さいやつみたいな雨雲だ。私の頭上30センチくらいの高さに浮いている。

 やば、濡れたらめんどいと思ってタクシーの運転手さんにさっさとお礼を言って走り出す。タクシーのドアを閉めた時、運転手さんがこちらを二度見していた気がする。運転手さんにも見えたのかもしれない。


 結局、タオルを貸してもらわないと家に入れないくらいにその雨雲には追いかけられずぶ濡れにされた。

 しかし、その雨雲は見事に私だけを追いかけて来ていたので私が濡れたものを引きずって歩いてきたみたいな跡になっていた。

 それは寺の敷地内に入った瞬間に消えた。


 百物語で今あったこと、として話したのだが、超雨女のお前ならそういうこともありそうだなと笑われて終わった。

 まあ、確かに「怖い話」ではなくて「タクシー運転手を怖がらせた話」になってしまったな、と思った。

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実話怪談「雨女」 常陸 花折 @runa_c_0621

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