EP4 『お友達』、始めました

 次の日のお昼ご飯はいつもより賑やかだった。

 わたし、かえで、そして蒼園あおぞのさん。向き合う人数は一人から二人、机の形はトライアングルになった。


「で、どうしてこうなったの?」


 目の前……失敬、『右斜前』に座る楓は目を細めて言った。急に蒼園さんがやってきたことが単純に疑問なのだろう。

 わたしは出来るだけ楓の目を見て、言う。


「それはね……友達に、なったから」

「……へぇ?」


 楓はわたしの弁明に明らかに納得していないようだった。まあそうだろうな、急に『友達になりましたー』なんて言われてクラス一の美少女が付いてきたのだから。

 蒼園さんの様子を見る。

 彼女は口こそ開かないものの、表情は穏やか。


 こうして、わたしたちの歪な『お友達』関係は始まった。


 ――放課後。


「じゃ、またあしたぁー」

「はーい、また明日」


 わたしは楓に別れを告げる。彼女は背中に二つのバッグ、片方は部活用。バレー部は大変なのだろうか、楓と一緒に帰れた日はかなり少ない。

 だからいつもこうして、教室で別れを告げるわけだが。

 そうした後のわたしは大抵、一人とぼとぼと帰路に付いていたわけだが、今日は、いや今日からは違う。

 隣には蒼園さんがいる。


 蒼園さんはどこか塩らしい。どうしたのだろう、告白してきた時の強さが全くと言っていいほど感じられない。

 髪をいじいじして、めちゃくちゃ可愛い上目遣い。

 ご尊顔をフル活用したその見た目は、どこからどう見ても最強美少女……。

 いけない、いけない。うっかりぼーっとしてしまった。


「じゃあ、帰ろうか」

「う、うん。帰ろう」


 わたしたちは連れ立って、教室を後にした。


 夕暮れが背中を照らす中、わたしの帰路は蒼園さんと共にあった。

 蒼園さんとわたしはちょうど背が一緒ぐらいだが、蒼園さんの方が姿勢がいいせいか、側から見たらわたしの方が小さく見えるだろう。

 わたしと蒼園さんの間に大した会話はなかった。

 それどころか、歩調すら合っていない。


「あれ? わたし速い? もうちょっとゆっくり歩こうか?」


 そう切り出すと、蒼園さんは即座に首を左右に振った。そして、ゆっくりと告げてくる。


「私、沙楽さらといる時間……大事にしたいの」


 眩しい。

 その微笑みは夕暮れが霞んで見える程、しかしかすか。

 そういった蒼園さんの頬はみるみるうちに紅潮していく。

 わたしの体温も上がったような気がした。


「じゃ、じゃあ。ゆっくり帰ろうか」

「う、うん。そうしたい」


 わたしは歩みを遅めた。

 依然として二人の間には会話はなかった。

 しかし。

 わたしたちの間は、確かな、そしてかすかな熱を孕んでいた。

 

 

 

 

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2026年1月12日 00:00
2026年1月13日 06:37

学校中の美少女たちがわたしのことを『彼女だ』と言い張って離れない! 戯就 航 @otaru_kou

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