湿っぽい
「あれ? くもがでてきたよ? おひさま、いなくなっちゃうかなあ?」
「ああ、いいぞ……さあ、雲よ! あの忌ま忌ましい太陽を覆い隠せ!」
「ひどい、なんてこというの! おひさまがないとげんきでないよ……」
「太陽はもう浴びただろ。ああ、このまま雲が増えて雨が降れば!……」
「そっか。つち、かわいてきてるもんね。そろそろおみずもほしいかも」
「そろそろじゃねえ、もうずーっとだ! おれはずっと水を求めてる!」
「あめ……ふるかなあ。あんまりふったらこまるんだけど、どうだろう」
「困るもんか、洪水を起こすように降れ、もうすっかり枯渇してんだ!」
「こ、かつ……?」
「水が涸れてんの」
「おみずがたりないってこと?」
「そういってんだろうが。まったくパッサパサでどうすんだよ、この土」
「たしかにちょっと、おみずがほしいね。すこしふってくれるかなあ?」
「少しじゃ足りねえ、この砂漠みたいな土だぞ! 土砂降りをよこせ!」
「どしゃぶりなんてだめだよ、ねっこがいたんじゃう! すこしでいい」
「雨で傷むもんか! この高温とパッサパサの土でこそ傷むだろうが!」
「だめだよ、つちがびしょびしょだったら、ねっこがくさっちゃうもの」
「ふん、貧弱な根っこだなあ! 雨の恵みを吸いあげられないなんて!」
「きみこそ、あんな しあわせをくれるおひさまをあびられないなんて!」
「ふん、太陽なんか浴びてなんになる! ただ葉が焼けちまうだけだ!」
「なんてよわっちい はっぱなんだ! おひさまをあびてやけるなんて!」
「おれはおまえと違って繊細なんだ! おれにとって直射日光は激しい火炎だ、そして、安らぎ潤う水を奪い去る地獄の王者、悪魔といっていい!」
「なんてこというんだ! あくまははげしいあめのほうじゃないか! つちではっぱをきずつけて、つちのなかをぐちゃぐちゃにして、いつまでもぼくたちをいじめる!」
「ばかいうんじゃねえ! 雨は恵みだ! 安らぎだ! クソ暑い空を雲で覆い、熱波を遮ってくれる! そして乾ききった土を潤してくれる! こんなに素晴らしいものがほかにあるか、いいや、ない! そうだろう!」
「だからおみずなんてそんなにいらないっていってるじゃない! ぼくはおみずなんかより、おひさまがほしい! あたたかくてからっとさせてくれるおひさまがすきなんだ!」
「あたたかいだと? 今の太陽は世界を焼き払うつもりになってるだろうが! あたたかいどころか酷暑だ! おれたちを生かしておくつもりなんかねえんだ!」
「おひさまをわるくいわないで! ああもう……きみがいじわるばっかりいうから、くもにかくれちゃったよ……」
「よし、さあ雲よ、雨をよこせ! 水をくれ、この砂漠を潤してくれ!」
「はあ……」
「おおきた、雨だ! ああ、ああ降ってきた……! こりゃ恵みだ!」
「うわっ、つよいよ……! わわっ、はっぱが! しんじられない!」
「ああ、涼しい……生き返る……!」
「ああちょっと、つちがはねてる! ぐちゃぐちゃになっちゃうよ!」
「おまえも浴びられるうちに水を浴びておけ。次、またいつ浴びられるかわからないからな」
「いらない! うわ、つち! ああもうしんじられない……! おひさまは⁉︎ おひさまはどこにいっちゃったの⁉︎」
「はははは! ああ、いい気分だ! さあ、土を潤し、灼熱の太陽に焼かれた葉を慰めておくれ……!」
「ああもうやだ……しずかにして……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます