第六四話 幽霊船
☆九月一日 午前六時 パイレーツ・ベース司令室
部下達を帰らせ、私は徹夜で何とか一仕事を終えた。ところが、仮眠室のベッドにて意識を手放そうとしたその瞬間に飛び込んできた知らせは、束の間の平穏さえ許してくれなかったのである。
「護衛艦が、消えた?」
受け入れられない私を尻目に、オペレーター達もまた信じられないという様子で続けた。
「正確に言うと、見つかってはいるんです。……ただ、通信に対して一切の返答がないという感じでしょうか」
巨大モニターに映し出されるは、海にぽつんと浮かぶ護衛艦一隻。偵察部隊から送られてくるその甲板には、動くものが一切見当たらない。
「護衛艦やはた、旧海上自衛隊所属の訓練艦です。昨夜、姫路の軍港から夜間演習に参加したのですが、帰還の為に単独航行を行っていた午前零時に連絡が途絶えたのです」
「それで、今さっき見つかったは良いが様子がおかしい、か」
間の悪い異変に、私は表情を歪める。
「現在、加古川沖合三キロ地点にて、やはたは漂流中。放送設備を利用した呼び掛けにも反応が一切ありません」
「これでは、漂う幽霊船だな」
私の脳裏に浮かんでいたのは、数日前のシャードンの姿。そう言えば、奴が現れたのはあの辺りだった。最も、それは過去の話。奴は今、地下の巨大冷凍室で転がっている筈なのだが。
(……嫌な予感がする)
何はともあれ、私に出来る事は一つだろう。
「各参加機関に通達。演習の一時中止及び、警戒態勢を取るように要請。ひとまず、あの幽霊船を調査するぞ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます