第五九話 決着

☆正午二分 パイレーツ・ベース

 大訓練場 ワンダJAPANテント


 蛮力と雷撃が襲い掛かり、猛攻の間隙を鋼の怪鳥が飛び回る。ボクは腕に娘の結花を抱き、息子の巧や先輩と肩を並べて二体のゼージスによる激闘を見守っていた。


「MarkⅡ、多分ベースは共生翼獣アルゲビスね」


 先輩の呟いたその一言に、巧は五歳児らしくない冷静な興味を示す。


「サワねえ、アルゲビスって何?」


 先輩は巧がよく見えるように抱き上げてくれた。視界を確保した息子は、興味深げに戦いの様子を見守る。


「怪獣の名前よ。単体では飛べないから、イカロスという別の怪獣と合体しているの」


 逆転の発想、とでも言うべきだろうか。本来、ただ飛ぶ為だけの相方を全方位攻撃に応用するとは。悔しい事に、ボクは知らぬ間に完成していたあの紅の巨体に何処か関心していた。


 ……飛行能力?


「先輩、じゃあ何であいつはゼージスに接近戦を挑んでるんですか? わざわざ共生してまで得た飛行能力なんです、上から熱線辺りで爆撃すれば良いのに」

「そこなのだよ」


 不意に、司令が口を開いた。


「……私には、笛木君がどうも焦ってるように見える」


 底知れぬ不安感と沈黙。二体の激闘だけが響き渡る中、木野先生は何かを察したように一言。


「医務室、念の為用意してくれ」


++++++++++++


 一進一退の攻防もクライマックス。相対する二体は全身を唸らせ、決着の一撃を放とうとしていた。


「暦ちゃん」

「分かってる」


 ボロボロの両機の喉元に光る、残された最後のパワーゲージ。これを先に壊した方が勝つ。俺達は、不思議と次の攻撃で決着すると確信していた。


「「いくよ!!」」


 咆哮と共に、進撃する両機。地響きと共に、お互いの巨体が瞬く間に近付いていく。雷撃を纏う無骨な拳に、白熱する鋭い鉤爪。コックピットに機械音が響き渡る中、互いに狙うはただ一つ、敵に残された最後の弱点のみだった。


 瞬間、互いの鋼同士が火花と共にぶつかり合い、衝撃波が森やテント達に吹き抜ける。怯まず、トドメの一撃を振り上げる両機。拳と鉤爪が互いの喉元に迫り……




 鉤爪だけが、不自然に狙いを外した。




「「え?」」


 直後、雷撃を伴う剛力がMarkⅡの喉元を殴り付ける。パワーゲージが砕ける音と共に、紅の巨体はあまりに呆気なく大地に崩れた。そこに、先程までの力強さはない。まるで、マネキンを張り倒したような感覚だった。


〈MarkⅡの全パワーゲージ破損を確認。よって、勝者はゼージスと認定します〉


 訓練場にアナウンスが流れる中、MarkⅡからの通信は苦しげなうめき声をあげていた。

 

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