第五八話 ゼージス対MarkⅡ
☆正午 パイレーツ・ベース 大訓練場
凄まじい咆哮同士がぶつかり合い、森に暴風が吹き荒ぶ。地を揺るがし、土煙と共に二体は互いに向けて猛進する。
「最初から飛ばすよ、暦ちゃん!!」
「うん!!」
鋼の右腕に荒ぶる雷撃を纏わせ、拳を高速回転させながらMarkⅡに殴りかかる。果たして、大気を焦がしながら振り下ろされた重厚なる一撃が、鋼の翼のすぐ足元を掠めた。
「しまっ……」
直後、炎を纏った剛爪がゼージスの背中を強烈に蹴飛ばす。凄まじい衝撃と共に、大地に叩き伏せられる蒼の巨体。背中のパワーゲージが破壊された事を知らせるアラームがコックピットに響き渡る中、MarkⅡの巨大な脚がゼージスの背を踏み付けた。
〈まずは、一個!! どんどん行くよ!!〉
キックと共にひっくり返され、両掌の鉤爪が白熱する。果たして、振り下ろされた斬撃が火花と共に胸のパワーゲージを切り裂いた。
「竜、このままじゃやられちゃう!!」
第二の警報と共に激しく揺れるコックピット。俺はただ今出来る最善を考え、汗に濡れた手で操縦桿を握り続ける。
「まだだ、まだやられないよ!!」
続け様に喉元へ繰り出された右爪に、鋼の顎が喰らいつく。動きを封じられ、一瞬生じた僅かな隙。刹那、ゼージスの頭部が駆動し、現れたバルカンが一斉に火を噴く。飛び散る薬莢と共に、マウントポジションの胸が撃ち抜かれた。
「暦ちゃん!!」
「オッケー!!」
突然の反撃に怯むMarkⅡに、高音と共に振り抜かれたヴェルバッサー。咄嗟にその巨体を捻られた事により、光の刃は当たりこそしなかった。が、靭尾の一撃は躱しきれなかった。怪力に吹き飛ばされ、地響きを伴い大地を転がる紅の巨体。直ぐ様体勢を立て直したその背中から、破損したパワーゲージが脱落する。
〈やっぱり油断しなくて正解だったよ、先輩!!〉
「丁度、同じ事を思った所だ!!」
二対二。互角という名の振り出しに戻された両者は睨み合い、全身にパイロットのエネルギーを迸らせた。
大口に稲妻を渦巻かせるゼージス。
両爪の間に炎を滾らせるMarkⅡ。
次の瞬間、咆哮と共に放たれた極太の雷撃レーザーと強力な熱線。雷と炎が互いに喰らい合い、暴風を吹かせながら空中で一進一退に撃ち合う。
「フルパワーで押し切るぞ!!」
全身に迸る稲妻に、紫電が混ざる。装甲が軋み、機器類が悲鳴のような駆動音を上げる中、レーザーはサンダスタルの電撃を巻き込んで螺旋を描いた。天井破りに上がっていく出力に、形勢はこちらへと傾いていく。
瞬間、雷鳴と共に螺旋は熱線を飲み込んだ。炎を撃ち破り、直撃した雷撃が大爆発と共に紅の巨体を吹き飛ばす。
吹き荒ぶ爆風に、一斉に飛び立つ鳥達。直後、MarkⅡの巨体が震動と共に斜面に叩き付けられた。悶絶と共に破壊されたパワーゲージが腹から脱落し、残すは喉元の一つのみ。この隙を見逃すまいと、ゼージスは土煙と共に猛進した。鋼の大角が喉元を貫かんと太陽の光を浴びて輝く。
刹那、死角からの高速の一撃が、腹のパワーゲージを切り裂いた。
〈悪いけど、ぼくはこっちだ!!〉
MarkⅡから分離したイカロスは、空を白熱した翼で切り裂き吐き捨てる。咄嗟に放ったバルカンの雨霰をすり抜け、身軽な猛禽が残された喉元を狙う。次々と音速で切り裂かれ、火花を上げるゼージス。靭尾を振るい、応戦を余儀なくされる中、本体が体勢を立て直す。怒りの咆哮と共に飛び上がり、背後から剛力が組み付いた。
「トドメだ!!」
押さえつけられ、ガラ空きになった喉元に迫るイカロス。白熱した翼を前に、俺達が取ったのはイカロスへの迎撃ではない。
羽交締めにする本体に、逆に掴み掛かる。抵抗を強引に捩じ伏せ、三つの雄叫びを合わせながら蛮力が装甲を軋ませる。
果たして、史上最大の背負投げに巻き込まれ、イカロス諸共MarkⅡは大地を転がった。凄まじい震動に、森の木々が何本も倒れる。
それでも、土煙と共に紅の巨体は立ち上がった。最早、マトモに飛べなくなったイカロスと再合体し、俺達と睨み合う。双方、残りゲージはあと一つ。これまでとは打ってかわり、一瞬の静寂が大訓練場を支配する。
「次で、決着だ」
……この時、俺達は知らなかった。その『決着』があまりに意外な形で終わる事を。
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