第四四話 ごめん

 焼き焦げた山肌に、数え切れない程の木々が倒れている。黒く炭化し、プスプスと煙を燻ぶらせるそれらは、辺りを白く染め上げていた。


 そんな焼け野原の中心には、巨影が転がっている。一度溶け出し、そしてもう一度固まったであろう結晶らしきモノに包まれたそれは、辛うじて判別できるような『骨』だった。


 直後、そんなボロボロの骨格も崩れ始める。下から押し上げる剛力に、塵と化していくサンダスタル。そして、入れ替わるように立ち上がる鋼の巨体。


 ☆午後一時五分 京都・滋賀県境山中 残り∞分


〈二人共!!〉


 何とか意識を取り戻し、ゼージスを立ち上がらせた俺を、サワさんの通信が怒鳴り付けた。


「ごめんなさい。もう、それしか言えませんよね」

〈あんなの滅茶苦茶よ!! 成功したから良いけど、失敗してたら……!!〉


 タジタジになりながらも、その声は何処か喜びを孕んでいるように俺は思えた。


「サワさん、説教はお祝いの席でたっぷり受けますよ」

〈ちょっと、まさか切るつもりじゃ〉


 通信を切り、振り返る。


 気絶した四人は、優しい光に包まれ癒されていく。自分の命も顧みず……いや、顧みながらも必死に戦った勇者達は暦の手により労われていた。


「「ありがとう」」


 俺達は、顔を見合わせた。全く同じタイミングで、全く同じ言葉。さっきまで心を一つにしていたとは言え、ここまでシンクロしなくて良い。何せ、ほんの少しとは言え、気まずくなるのだから。


「竜」


 誤魔化そうと、コックピットの機器類をチェックしていた俺の背を暦の声が貫いた。


「やっぱり、わたしにはまだ分からないや。あの日の感情の事も、この人達の事も。でもね」


 再び振り返った時、俺は、自分の瞳に飛び込んだ光景に少しばかり驚いた。


「ロズベオンの時は、ごめん」


 ぎこちないながら、その人形のような顔には申し訳無さ気な笑顔が浮かんでいた。


「悩むのは、あとでで良いよね。目の前にいる人を見捨てたら、竜が悲しむから」


 きっと、暦はは『答え』を見つけた訳では無いだろう。これからも暦はやっぱり悩み続けるに違いない。


 それでも、俺達は前進したのだろう。


「……ふふっ」


 俺は、思わず噴き出してしまった。


「今日の所は、救い出せた今日に拍手だね」






 

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