第四〇話 うん!!

☆正午五〇分 京都・滋賀県境山中 

  山中 ゼージスコックピット


〈二人共、聞こえる?〉


 突然、サワさんからの通信がわたし達に問いかけた。


「「聞こえます」」


 わたし達は、睨み付けるサンダスタルと向き合う。雷雲が如く黒ずんでいた体は、徐々に危険な白の輝きを帯びていく。先程にも増して、迸る紫電達はその数を増やしていた。


〈今、教授さんと改めて計算してみたんだけど、奴は街一つを吹っ飛ばすくらいの威力で爆発するみたい。一応、ここなら市街地への被害は抑えられそうだけど……〉


 山中に響き渡る怒りの咆哮は、何処か焦燥しているようにも聞こえる。燃え盛る瞳は、依然としてわたし達のすぐ背後…京都の街へと向いていた。


「サワさん、タイムリミットは?」

〈多分、一時くらい。あと十分間ってところかしら?〉


 その答えに、竜は操縦桿を握り締める。わたしからも、その手が汗に濡れているのが見えた。


「短いけど、再侵攻には十分過ぎますね」


 戦意を滾らせるサンダスタルにゼージスは応える。わたしが息を呑み、集中すれば鋼の巨体に黄金の電撃が迸った。


 爆ぜようとする紫の稲妻と、守ろうとする黄金の雷。唸り声と共に睨み合う双電が宙でぶつかり合う。


〈少し変わるぞ。こちら、佐神だ〉


 司令の声は震えながらも、冷静に作戦を伝えた。


〈君達には、時間を稼いで欲しい。爆発する三分前までの七分間、ここに奴を釘付けにするんだ〉


 竜の手が、ますます操縦桿を強く握り締める。睨み合う二体を、星野達は震えて見守っていた。


〈三分前になったら、スラスター飛行で速攻撤退せよ。出来れば、勇気ある彼らも連れていって欲しい。最も、最優先は君達の命だがね〉


 その言葉に反応したのだろうか。通信機の奥から少し揉み合うような音が聞こえた。


〈こちら木野だ。死ぬ気でいるなら今すぐやめろ。お前みたいな死にたがり野郎が、オレは一番嫌いなんだ〉


 竜は、目を閉じ息を整える。


「分かりました。死んでも守り抜きます」

〈おい、話を聞いて〉


 通信を切り、竜はわたしに振り向いた。


「行くよ、暦ちゃん」


 決して、葛藤や苦悩がなくなった訳じゃなかった。星野達の正しさも、竜の心も、あの日覚えた感情の正体も、未だによく分からなかった。


 ……でも、たった一つ分かった事があった。


(相手が誰であれ、今そこには誰かを助けようとする優しさがあるんだ)


 わたしは、息を吸い込み、叫ぶように口を開いた。


「うん!!」

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