【最終章: 闇の頂点】
現実世界の深夜、悠真は病院のベッドで目を覚ました。点滴の管が腕に繋がれ、モニターのピッピッという音が静かに響く。医師の話では「重度の睡眠障害とストレスによる過労」。夢遊病の症状が悪化し、家族(いないけど)に連絡を取ろうとしたらしい。拓也が駆けつけてくれて、ベッドサイドでスマホを握りしめていた。「悠真、最近変だったもんな。剣道の大会も近いのに、無理すんなよ」。
悠真は微笑んだ。「ありがとう。もう少しで終わるよ。夢が……終わったら、全部話す」。エコリアの戦いが、現実の体を蝕んでいる。でも、りえの記憶、リエルの真実、セラの過去——すべてを終わらせるため、もう一回転移する。
目を閉じ、渦潮を強く呼ぶ。「リエル、セラ……待ってて。最終決戦だ」。
──エコリア、古城地下祭壇。満月の頂点。
魔法陣の渦潮が最大に膨れ上がり、青白い光が部屋を満たす。ヴォルドは中央に立ち、両手を広げている。黒いローブの下から、無数の記憶の糸が伸び、祭壇に吸い込まれていく。
「これで終わりだ。転移者の地球記憶、リエルの合成体、セラの残骸——すべてを統合し、俺だけが永遠に存在する世界を作る!」
悠真は傷だらけの体で立ち上がり、剣(拾った衛兵のもの)を構えた。リエルとセラが両脇に並ぶ。三人の記憶が共有で繋がり、互いの痛みと決意が一つになる。
セラが短剣を回し、笑った。「へへ、浩太の記憶が少し戻ってきたぜ。地球の残業地獄より、こっちの方がマシだ。悠真、リエル、一緒に終わらせよう。」
リエルはナイフを握り、涙を浮かべながら叫んだ。「お兄ちゃん……俺、りえの記憶でここにいる。でも、今の俺はリエルだ。ヴォルドの道具じゃない! 地球のカレー、ブランコ、家族の温もり——全部守るよ!」
ヴォルドが嘲笑い、他人の記憶を強制燃焼。巨大な炎の竜が三人を襲う。悠真は残った記憶を燃やし、土の壁と風の盾を張る。「大学での孤独、剣道の汗、友達との笑顔……失ってもいい! 君たちを守るためなら!」
炎が壁を砕く。セラが傷を負い、リエルが治癒を試みるが、限界に近い。
ヴォルドがリエルに手を向ける。「戻れ、リエル。お前は俺の合成娘。悠真の妹の記憶を基に作った器だ。地球の日常を混ぜ、転移者のトラウマを吸い取るための……」
リエルは首を振った。「違う! 俺はもう、お兄ちゃんの妹であり、仲間だ! りえの記憶が教えてくれた——家族は、失っても心に残る!」
セラがヴォルドに飛びかかる。「俺の地球記憶も、燃料だぜ! 渋谷の喧騒、阿佐ヶ谷のアパート、コンビニの弁当——全部燃やして、てめえを止める!」
セラは残った地球記憶を燃焼。高速移動と爆発的な光を放ち、ヴォルドのローブを裂く。だが、ヴォルドの反撃でセラが吹き飛ばされる。
悠真は叫んだ。「セラ!」
セラは壁に叩きつけられ、立ち上がれない。「へへ……浩太の記憶、ほとんど燃やしちまった。もう、地球の詳細は薄れるけど……悠真、リエル、後は頼む。」
ヴォルドが悠真に迫る。「お前の妹の記憶、最後の切り札だな。儀式を完成させるため、すべてよこせ!」
渦潮が悠真を引き込み始める。妹の事故の記憶——りえの最後の笑顔、車内の衝突、渦潮の闇——が吸い取られそうになる。
リエルが悠真を抱きしめ、共有を最大に。「お兄ちゃん! りえの記憶、俺が一緒に持つ! 燃やさないで——共有で、分かち合おう!」
二人の共有が渦潮に対抗。りえの地球記憶——学校の友達、給食の味、公園のブランコ、家族のカレー——が光となって広がる。温かな日常の記憶が、ヴォルドの冷たい統合を拒絶する。
悠真は決意した。「ヴォルド、お前の孤独、わかるよ。記憶を収集して永遠を目指すなんて、俺のトラウマと同じ。でも、記憶は失っても、共有で残る! リエル、セラ、俺の仲間が証明だ!」
悠真は最後の記憶——妹の最後の笑顔——を燃やさない。代わりに、共有の力で渦潮を逆回転させる。りえの温かな記憶、セラの地球の日常、リエルの強さ、悠真の成長——すべてが一つになり、ヴォルドの儀式を崩壊させる。
ヴォルドが絶叫。「不可能だ! 記憶は俺のもの……!」
祭壇が崩れ、光が爆発。ヴォルドの姿が灰のように散る。「……孤独は、永遠か……」
城が揺れ、崩壊が始まる。三人は出口へ走る。セラを支え、リエルが治癒。
外へ脱出。満月が沈み、朝日が昇る。エコリアの世界が、静かに変わり始める。記憶の渦潮が穏やかになり、空が澄む。
リエルが悠真に寄りかかり、「お兄ちゃん……終わったね。りえの記憶、俺の中に残ってる。地球のカレー、作ってみたい。」
セラが弱々しく笑った。「へへ、浩太の記憶も、少し戻ったぜ。悠真、大学楽しめよ。俺は……ここで放浪続けるさ。」
悠真は二人を抱きしめた。「ありがとう。エコリアは俺の心の世界だった。でも、君たちは本物だ。現実に戻っても、記憶は残る。」
世界が光に包まれ、転移の渦潮が悠真を呼ぶ。
現実世界、病院のベッド。悠真は目を覚ました。体は軽く、ストレスは消えている。医師が驚く。「奇跡的回復です」。
大学に戻り、剣道大会で優勝。拓也や友達と笑い、りえの墓参りで話す。「りえ、終わったよ。お前の記憶、守った」。
夜、ベッドで目を閉じると、穏やかな渦潮が感じられる。リエルとセラの声が、遠くから聞こえる。「また来いよ、お兄ちゃん」「へへ、待ってるぜ」。
エコリアは消えていない。心の世界として、いつでも繋がる。新しい記憶を作りに、悠真は時折転移する。
現実とエコリア、両方の日常が、悠真の人生を豊かにする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます