【第6章: 地球の幻影(リエルの地球記憶)】
現実世界の夕方、悠真は阿佐ヶ谷の駅前を歩いていた。セラの記憶断片——阿佐ヶ谷のアパート、302号室——を頼りに、周辺を散策してみた。古いマンションが並ぶ路地を眺めながら、スマホで地図を確認する。拓也から剣道の練習の誘いが来ていたが、今日は断った。「なんか、昔の知り合いのこと調べてるんだ」。本当はセラの過去を思い出しながら、リエルのことも気になっていた。リエルはエコリアの生まれのはずなのに、共有する度に、地球の断片のようなものがちらつく。合成記憶のせいか? それとも、俺の心の投影だから?
大学帰りのカフェでノートにメモを取る。リエルの記憶の空白——そこに地球の要素が隠れている気がする。今日の転移で、深く探ってみよう。
アパートに戻り、ベッドに横たわる。「リエル、待ってて。君の記憶、探るよ」。渦潮を呼び、意識を沈める。
──エコリア、古城への道中。六日目の朝。
三人は森を抜け、荒野に入っていた。古城のシルエットが遠くに見え、満月の夜が近づく緊張感が空気を重くする。セラは先頭を歩き、時折地図を確認。リエルは悠真の隣を歩き、時折手を触れて共有を確かめている。昨夜のセラの地球記憶の話以来、三人の会話は地球の話題が増えていた。
悠真はリエルに視線を向け、歩きながら聞いた。「リエル、ちょっと聞きたいんだけど……お前の記憶、もっと深く共有してみない? 合成記憶だって言ってたけど、地球の断片みたいなものが、ちらつくんだ。俺の共有の影響かもだけど……探ってみようよ。」
リエルは足を止め、青い瞳で悠真を見た。銀色の髪が風に揺れる。「……地球の断片? 俺の記憶はエコリアのものだけだよ。母親の病、市場の喧騒、記憶売買の冷たさ……それだけ。でも、悠真と共有する度に、変な感覚がある。現実世界の記憶が、俺の空白に染み込んでくるみたいで……怖いけど、探ってみるか。」
セラが振り返り、にやりと笑った。「へへ、面白そうだな。俺の地球記憶探ったみたいに、リエルもか? 合成記憶なら、ヴォルドが地球の要素を混ぜてるかもよ。お前の過去、意外なものが出てくるぜ。」
三人は岩陰に座り、共有の準備をした。リエルが悠真の手に触れ、深く意志を込める。「……いくよ。俺の記憶の奥底、空白の部分を探って。」
共有が始まった。通常の流れを超え、深層へ。リエルの記憶——貧しい村、母親の死、記憶商人の日々——が流れ込む。だが、空白の渦に近づくと、奇妙な断片が浮かぶ。地球の要素。悠真は息を飲んだ。
──リエルの記憶断片(地球関連)。
東京の街角。幼い少女の視点。ピンクのランドセルを背負い、学校帰り。母親の手を握り、「お母さん、今日の給食おいしかったよ」と言う。背景は阿佐ヶ谷の住宅街。アパートの階段を上り、部屋に入る。テレビからアニメの音、キッチンで母親が夕食を作る。匂いはカレーライスの香り。
別の断片。公園でブランコに乗り、風を感じる。妹のような存在? いや、視点が少女自身。父親の声「リエル、気をつけろよ」。名前がリエル? いや、似た響き——「りえ」? 地球の名前。
さらに深く。事故の瞬間。車の中、家族旅行中。雨の高速道路。スリップし、衝突。渦潮のような光が視界を覆い、少女の意識が遠のく。「お兄ちゃん……」と呟く声。
──共有の深層で、断片が繋がる。リエルは悠真の妹「りえ」の投影。地球の記憶が、合成記憶の基盤。ヴォルドの儀式で、悠真のトラウマ記憶を吸い取って合成されたが、地球の要素が残存。
共有が強くなり、リエル自身が震えた。「うっ……これ、俺の記憶? 東京? 阿佐ヶ谷? ランドセル? カレー? そんなの、エコリアにないのに……感じる! 母親の顔が、地球のものに変わる……!」
悠真は手を強く握り、共有を安定させた。「リエル、これお前の……いや、俺の妹の記憶だ! りえの日常。給食、公園、事故……エコリアは俺の心の世界で、お前はりえの投影だって、終盤でわかるはずだけど……今、共有で明らかになってる!」
セラが割り込み、共有に加わった。「へへ、俺の地球記憶と重なるぜ。阿佐ヶ谷? 俺のアパートと同じ場所! リエルの記憶、悠真のトラウマから生まれたんだな。ヴォルドが、悠真の地球記憶を合成してリエルを作ったのかも。」
リエルは涙を浮かべ、共有を深めた。「……お兄ちゃん? 俺、りえ? そんな感覚が……公園のブランコ、風の匂い、母親のカレー……エコリアの記憶と混じってる! 怖いけど、温かい……悠真、これが俺の本当の記憶?」
悠真はリエルを抱きしめ、共有で伝えた。「そうだよ、リエル。お前は俺の妹の記憶から生まれた。地球のりえの日常——学校の友達、給食の味、家族の夕食、アニメ見て笑う時間——それが空白に隠れてた。ヴォルドの合成で、エコリアの設定が上書きされたけど、共有で剥がれてる!」
詳細な断片がさらに流れる。
• 学校の記憶:小学校の教室。黒板に算数の問題。友達と「今日の宿題、一緒にやろう」と話す。ランドセルの重さ、校庭の砂ぼこり。
• 家族の記憶:阿佐ヶ谷のアパート。父親が仕事から帰り、「りえ、今日学校どうだった?」と聞く。母親の作るカレーライス、ルーの甘辛い味、じゃがいもの食感。
• 休日の記憶:近所の公園。ブランコに乗り、空を仰ぐ。風が髪をなびかせ、遠くの電車の音。兄(悠真)の声「りえ、落ちるなよ」。
• 事故の記憶:家族の車旅行。雨の夜、高速道路。父親のハンドル操作ミス。衝突の衝撃、ガラスの割れる音、渦潮のような闇。りえの最後の思い「怖い……お兄ちゃん、助けて」。
リエルは共有を断ち、息を荒げた。「これ……俺の地球記憶? りえの人生……エコリアの俺と混じって、混乱する。でも、悠真の妹だってわかる……温かい家族の記憶、失いたくない!」
セラが静かに言った。「へへ、リエルの合成記憶、悠真のトラウマが基盤か。ヴォルドは転移者の地球記憶を狙って、リエルを作ったんだな。儀式で、全て統合するつもり。」
悠真はリエルを抱きしめた。「リエル、ありがとう。探ってよかった。お前の地球記憶——りえの記憶——が、俺の心を癒すよ。現実に戻ったら、りえの墓参りして、思い出話するよ。」
リエルは涙を拭き、微笑んだ。「……お兄ちゃん? 俺、りえの記憶で、地球に行きたい。カレー食べて、ブランコ乗って……共有で、感じてるよ。」
三人は焚き火を囲み、リエルの地球記憶をさらに共有した。りえの日常——東京の賑やかさ、学校の友達、家族の温もり——が、旅の希望になる。
現実に戻った悠真は、りえの墓へ向かった。阿佐ヶ谷の墓地で、花を供え、「りえ、記憶探ったよ。お前の人生、共有で生きてる」。大学で拓也に会い、「妹の思い出話、聞く?」と本音を話す。リエルの地球記憶が、現実をより豊かにした。
旅は続く。古城での決戦が、待つ。リエルの真実が、鍵に。
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