【第5章: 裏切りの影2(セラの地球記憶)】
現実世界の昼休み、悠真は大学キャンパスのベンチに座り、弁当を食べていた。拓也が隣に座り、スマホを見ながら話しかける。「悠真、来週の剣道大会、俺たちペアで出ようぜ。お前の最近の動き、マジで頼もしいよ。なんか、プロの剣士みたいだもん。」
悠真は笑った。「ありがとう。夢で練習してるんだよ、変な夢でさ」。エコリアの影響が、現実の剣道に直結している。セラの過去を聞いた昨夜の記憶が、まだ鮮明に残っていた。あの断片的な地球の記憶——セラが本当に日本人で、東京で暮らしていたという事実が、悠真の心をざわつかせていた。自分と同じ世界から来た先輩。失われた記憶の詳細が、もっと知りたい。
講義を終え、アパートに戻ってすぐに転移。今日はセラの地球記憶を、深く共有してみよう。
──エコリア、古城への道中。五日目の夜。
三人は古い廃墟の近くでキャンプを張っていた。満月が近づき、空気が重い。ヴォルドの古城はもうすぐそこだ。焚き火の炎が三人の顔を照らし、リエルはナイフを研いでいる。セラはいつものように木の幹に寄りかかり、空を見上げていたが、昨夜の告白以来、少し表情が柔らかくなっている。
悠真は薪をくべながら、切り出した。「セラ、昨夜の話の続き、聞かせてくれないか? お前の地球の記憶……もっと詳しく。共有で断片見たけど、東京の街並み、電車の音、コンビニの弁当……俺の日常とそっくりだよ。お前、本当に日本人だろ? どんな生活してたの?」
セラは少し黙ってから、苦笑した。「へへ、しつこいな、悠真。お前、俺の過去に興味持ちすぎだろ。でも……まあいいか。共有で少し鮮明になってきたし、話すよ。記憶ないって言ってたけど、断片が残ってるんだ。お前の大学生活の記憶が、俺の古い記憶を刺激してるみたいでさ。」
リエルがナイフを置いて、興味深そうに加わった。「セラ、俺も聞きたい。お前の地球の話、悠真から共有で少し感じたけど……エコリアとは全然違う世界だな。詳しく教えて。」
セラは焚き火を見つめ、ゆっくり語り始めた。「地球の俺……名前は『浩太』だったと思う。三十歳くらいの、普通のサラリーマン。東京の会社で働いてた。毎日、満員電車に乗って、通勤ラッシュに揉まれてさ。朝の山手線、ぎゅうぎゅう詰めで、スマホ片手にニュース見て、ため息ついてた記憶が残ってるよ。」
悠真は目を輝かせた。「山手線! 俺も乗ってるよ! 新宿とか渋谷とか?」
セラは頷き、目を細めた。「ああ、渋谷だ。会社は渋谷のIT企業。スクランブル交差点の近くで、昼休みにコンビニ弁当買って、公園で食ってた。唐揚げ弁当とか、幕の内弁当……味まで少し思い出せるよ。安くて、でもまあまあ美味い。あと、残業後に居酒屋で同僚とビール飲んで、愚痴言い合ってた。『上司のあいつ、また無茶振りかよ』ってな。」
リエルが首を傾げた。「サラリーマン? IT企業? それって何?」
悠真が説明した。「会社員だよ。パソコンで仕事する会社。俺の大学も、渋谷から近いんだ。セラの会社、どんなビル?」
セラは共有の意志を込めて、悠真の手に触れた。軽い共有が始まり、断片記憶が流れ込む。
──セラ(浩太)の記憶断片。
高層ビルのオフィス。デスクにパソコンが並び、キーボードの打つ音が響く。浩太はネクタイを緩め、モニターを見つめている。画面にはコードや表計算ソフト。隣の同僚が「浩太さん、また徹夜っすか?」と声をかける。
昼休み。渋谷のスクランブル交差点を渡り、セブンイレブンへ。弁当コーナーで「唐揚げ弁当、温めてください」とレジで言う。外のハチ公前でベンチに座り、弁当を食べる。人波が行き交う。
残業後。新宿の居酒屋。生ビールジョッキを傾け、同僚と「プロジェクトの納期、無理だろ」「上司のプレゼン、意味わかんねえ」と愚痴。笑い声が上がる。
家は阿佐ヶ谷のアパート。小さなワンルーム。帰宅してカップラーメン食い、テレビ見て寝る。休日は秋葉原でガジェット見たり、友達とカラオケ。
そして、事故の夜。過労で疲れ切った浩太は、車で帰宅中。高速道路で居眠り。ハンドル操作を誤り、ガードレールに衝突。渦潮のような光が視界を覆い、意識が遠のく。
──共有終了。
悠真は息を荒げ、手を離した。「セラ……浩太さん。阿佐ヶ谷? 俺の大学、阿佐ヶ谷の近くなんだ! 中央線使ってる?」
セラは驚いたように目を丸くした。「阿佐ヶ谷……そうだ、アパートは阿佐ヶ谷だった。中央線で新宿乗り換え、渋谷まで。へへ、お前と近い世界にいたんだな。共有で、お前の大学の記憶——キャンパスのベンチ、カフェテリアの弁当——俺の昼休みと重なるよ。コンビニの弁当、似てる味だろ?」
リエルが感心した。「すごいな……地球の東京って、そんなに賑やかで、毎日忙しい世界なのか。セラの記憶、共有で少し感じたよ。満員電車、苦しそうだ。でも、仲間とビール飲む記憶、楽しそう。」
セラは懐かしそうに笑った。「ああ、楽しかったよ。同僚の顔はぼんやりだけど、声は覚えてる。『浩太、飲みすぎ!』って笑う奴とか。休日は秋葉原で電子パーツ見て、最新のスマホ触ったり。俺、ガジェット好きだったみたいだ。お前のスマホの記憶、見てると懐かしいぜ。」
悠真は興奮して聞いた。「事故の前、何してた? 家族は?」
セラは目を伏せた。「家族……ぼんやりだけど、両親は地方にいたと思う。独り暮らしで、たまに電話してた記憶が。彼女? いた気がするけど、顔が思い出せない。別れたか、振られたか……共有で、お前の大学友達の記憶見てると、俺もそんな青春あったらよかったなって思うよ。俺の地球生活、仕事中心で、孤独だったかも。」
リエルが静かに言った。「セラ、お前の記憶、ヴォルドの儀式で失われた部分もあるのか? 転移して、記憶燃やしすぎたって言ってたけど……」
セラは頷いた。「ああ。エコリアに来て最初、ヴォルドの部下に捕まった。記憶を吸われかけて、必死に燃焼で逃げた。あの時、地球の記憶の半分を失ったんだ。東京の詳細——渋谷の喧騒、電車の揺れ、コンビニの電子音——全部薄れた。残ったのは、断片と感覚だけ。お前の共有で、少しずつ戻ってきてるよ。阿佐ヶ谷のアパートの部屋番号まで、ちらっと見えたぜ。302号室、だったかな。」
悠真はセラの手を強く握った。「セラ、ありがとう。詳しく話してくれて。俺の大学生活、共有で刺激になってるなら、もっと見せてやるよ。現実に戻ったら、阿佐ヶ谷散策してみる。セラのアパート、探してみるよ。」
セラは珍しく真剣な顔で、「へへ、頼むよ、悠真。お前の記憶が、俺の失った地球を繋いでくれる。ヴォルドを倒したら、もっと記憶戻るかもな。」
リエルが微笑んだ。「セラの地球記憶、俺も共有で感じてるよ。東京の賑やかさ、ビールの泡の味……エコリアに来たら、俺たちと一緒に新しい記憶作ろう。」
焚き火の炎が三人の顔を照らす。セラの地球記憶——東京のサラリーマン生活、渋谷の喧騒、阿佐ヶ谷のアパート、満員電車、コンビニ弁当、居酒屋の笑い声——それらが、悠真の日常と重なり、絆を深める。
セラは最後に呟いた。「浩太……久しぶりに、自分の名前思い出したよ。ありがとう、悠真。」
現実に戻った悠真は、興奮してスマホで検索した。阿佐ヶ谷の地図、中央線、渋谷のIT企業。セラの記憶が、自分の世界と繋がっている。明日、大学帰りに阿佐ヶ谷を散策しよう。セラのために。
旅は続く。ヴォルドの古城が、満月と共に迫る。セラの過去が、戦いの鍵になる。
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