【第2章: 旅の始まり】
悠真は大学の講義室でノートを取っていた。文学史の教授が中世の騎士物語について熱く語っている。普段ならぼんやりと聞き流すところだが、今日は違う。エコリアでリエルから共有された剣術の記憶が、教授の話と重なる。剣の握り方、戦いの心理描写——すべてがリアルに感じられる。隣の席の友達、拓也が小声で囁いた。「悠真、最近マジで変わったよな。ノート取るのも真剣だし、剣道サークルで活躍してるって聞いたぜ。なんか彼女できた?」
悠真は苦笑いしながら答えた。「いや、彼女じゃないよ。ただ……最近、面白い夢見てさ。剣の練習してる夢。そしたら体が覚えてるみたいで。」本当のことは言えない。エコリアの存在、リエルのこと、記憶共有の力——すべてを隠すしかない。でも、共有の影響は確実に現実を変えていた。剣道の授業では借りた記憶で技が冴え、教授の質問にも積極的に答えられるようになった。レポートの締め切りも守れるようになり、友達との会話も増えた。孤独だった大学生活が、少しずつ色づき始めている。
講義が終わると、悠真はアパートに戻り、すぐにベッドに横たわった。「今日は早く転移できるかな……リエルとセラに会いたい。」目を閉じ、渦潮を意識する。数回の転移を繰り返すうちに、呼び方は上手くなっていた。視界が歪み、いつもの霧が広がる。
目を開けると、そこはメモリアの北門外、広大な平原だった。青々とした草が風に揺れ、遠くに山脈が見える。空は現実世界より鮮やかな青で、雲がゆっくりと流れている。リエルとセラが待っていた。リエルはいつものローブに革のブーツを履き、背中に小さなリュックを背負っている。セラは相変わらずぼさぼさの髪で、地面に座って草をいじっていた。
「遅かったな、悠真。」リエルが立ち上がり、軽く手を振った。「現実で何かあったか? 共有で少し感じたけど、大学で友達と話してる記憶が流れてきたぞ。剣道の練習? お前、笑顔が増えてるな。」彼女の声は少し照れくさそうで、青い瞳が優しく悠真を見つめる。
悠真はリュックを下ろし、息を整えた。「ああ、待たせてごめん。今日は講義が長引いてさ。でも、リエルのおかげだよ。共有された剣術の記憶が、現実で活きてる。剣道サークルで技が出せて、みんなに驚かれた。友達の拓也って奴に『彼女できた?』って聞かれて、慌てちゃったけど。」悠真は笑いながらリエルの隣に座った。草の感触が心地いい。
セラが立ち上がり、にやりと笑った。「へへ、彼女か? リエル、チャンスだぜ。お前の記憶も悠真に流れてるんだろ? 現実世界の大学生活、面白そうだな。講義ってどんな感じ? 俺、記憶ないから想像もつかねえよ。共有で少し見せてくれよ、悠真。」セラは悠真の肩に手を置き、軽く共有を試みた。悠真の大学の記憶——教室の黒板、教授の声、友達との雑談——がセラに流れる。
セラは目を輝かせた。「おお、すごい! みんな座って本読んでるだけなのに、なんか楽しそうだ。剣道の記憶も残ってるな。お前、最近上手くなったってみんな言ってるんだろ? エコリアの力が現実を変えてるぜ。俺もそんな変化欲しいけど、記憶ないからなあ……へへ。」
リエルは少し嫉妬したように口を尖らせた。「ふん、セラはいつもそんな調子だ。悠真、現実の変化、嬉しいよ。お前の孤独が薄れてるのが、共有でわかる。大学で友達増えたんだろ? 詳しく聞かせて。講義で何してるの? レポート?」
悠真は草を摘みながら話し始めた。「文学部だから、古い本の歴史とか小説の分析をするよ。昔はつまんなくてぼんやりしてたけど、今はエコリアの冒険がインスピレーションになってる。剣と魔法の話が、教授の騎士物語と重なるんだ。レポートも、記憶共有の心理描写みたいに深く書けるようになった。友達とカフェで話すのも楽しいよ。昨日は拓也と剣道の話で盛り上がってさ。」
リエルは興味深そうに聞き、時折共有で悠真の記憶を覗き込んだ。「カフェ? 甘い飲み物飲むところか? お前の記憶で見えたよ。コーヒーとケーキ……エコリアにないな。羨ましい。俺の日常は市場で記憶売るだけだ。母親の記憶を売った日とか、辛くて……でも、お前の大学生活見てると、希望が湧くよ。」リエルの声が少し震え、共有で互いの感情が深く混じる。悠真の温かさがリエルに、リエルの強さが悠真に伝わる。
悠真はリエルの手を取った。自然に触れ、共有が深まる。「リエル、ありがとう。共有のおかげで、俺の心が軽くなったよ。大学で積極的になれたのも、君の剣術と強さが伝わってるから。現実で自信がついて、講義でも発言するようになった。教授に褒められたよ。」
リエルは頰を赤らめ、手を握り返した。「……ばか、そんな大袈裟な。お前の現実世界、行ってみたいよ。大学ってどんな建物? 講義で何学ぶの? 剣道以外に、何か面白いことある?」
悠真は笑って説明した。「大学は大きなキャンパスで、図書館がいっぱい本あるよ。講義は教授が話して、学生がノート取る。文学部だから、小説の読み方とか作家の人生学ぶ。面白いのは、友達とディスカッションする時。昨日は中世の騎士の話で、エコリアのヴォルドみたいだって思っちゃったよ。」
セラが割り込み、笑った。「ヴォルド? あいつは記憶貴族だぞ。城は北の山脈だ。共有民の村を通るルートが一番早いけど、気をつけろ。あそこは全員の記憶が繋がってる。個が溶けるぞ。俺みたいに記憶ない方が、逆に安全かもな! へへ。」
三人で立ち上がり、旅を始める。平原を北へ向かって歩く。風が心地よく、遠くに鳥のような記憶獣が飛ぶのが見える。リエルが地図を広げ、「この道で三日かかる。夜はキャンプだ。悠真、現実での変化、もっと聞かせて。剣道サークルって、何人いるの?」
悠真は歩きながら答えた。「二十人くらいかな。女子もいて、みんな熱心。共有の記憶で技が出せて、キャプテンに『センスいいな』って言われたよ。練習後、みんなでラーメン食いに行ったりする。エコリアの戦闘みたいに、チームワーク大事だって気づいた。」
リエルは感心し、「チームワークか……俺はいつも一人で市場生きてきたけど、悠真とセラと一緒だと、楽しいよ。共有で、お前の友達の記憶見える。笑顔がいっぱいだな。俺も、そんな仲間欲しい。」
セラが後ろから叫ぶ。「おいおい、俺も仲間だぜ! 記憶ないけど、勘はいいんだ。ほら、あそこに川がある。休憩しようぜ。」
川辺で休憩。三人は水を飲み、足を浸す。悠真がリエルに聞く。「リエル、ヴォルドの陰謀って、具体的に何? 共有民の村で情報得られる?」
リエルは水面を見つめ、静かに答えた。「ヴォルドは記憶を収集して、不老を目指してる。全記憶を統合する『究極の渦潮』って儀式を計画中だ。お前の転移者の記憶——現実世界の新鮮なものが、鍵かも。共有民の村は全員繋がってるから、ヴォルドの情報持ってるはず。でも、深く共有すると危ない。個性が溶けて、戻れなくなる奴もいる。」
悠真は不安げに、「怖いな……でも、君たちがいれば大丈夫だよ。現実の大学で、友達と話す練習になった。共有で心が強くなった。」
夕暮れ時、キャンプを張る。焚き火を囲み、セラが乾パンを配る。「悠真、現実に戻ったら、何したい? 大学卒業後。」
悠真は火を見つめ、「作家になりたいかも。小説書くの。エコリアの冒険を、ファンタジーとして。記憶共有の話、面白そうだろ?」
リエルは目を輝かせ、「本当? 俺の話も入れてくれよ。お前の大学生活みたいに、希望のある話に。」共有で互いの夢が混じり、温かな感情が広がる。
セラが眠そうに、「おいおい、ロマンチックだな。俺は記憶取り戻したいぜ。へへ、おやすみ。」
夜空の下、悠真はリエルと少し話す。「リエル、ありがとう。エコリアが、俺の現実を変えてるよ。」
リエルは微笑み、「俺もだよ、悠真。お前の記憶が、俺に光をくれた。」
現実に戻った悠真は、翌日の大学でさらに積極的に。剣道練習で新技を披露し、友達に囲まれる。「悠真、ほんと変わったな!」エコリアの旅が、現実の成長を加速させていた。
旅は続く。共有民の村へ向かう道で、三人の絆は深まっていく。
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