第十回:嵐の前夜祭、更衣室の不審者は誰だ?

学園祭を翌日に控え、女子寮「白亜館」は熱気(と殺気)に包まれていた。 俺、悠真(悠美)は、ミスコンの最終リハーサルを終え、クタクタになって自分の部屋……という名の、桜・美雪・白鳥の三人に監視された共用部屋へ戻ろうとしていた。


「ふふ、悠美ちゃん。今日のウォーキング、少し腰の振りが甘いわね。……夜にお部屋で、私がじっくり『腰の動かし方』を叩き込んであげるわ」 桜が、ミスコンの優勝旗をムチのようにしならせながら微笑む。


(頼むから、普通の生徒会長に戻ってくれ……!)


そんな時、一階の更衣室から「ガサゴソ」と不審な音が聞こえてきた。


「……誰かしら? 泥棒?」 美雪が、袖の中から対戦車用(に見える)巨大な護符を取り出す。


「あはは! もしかして、私の作品を盗みに来たファンかな? 捕まえて『人間椅子』の材料にしちゃおう!」 白鳥が電動ドリルを起動し、火花を散らす。


俺たちが更衣室のドアを勢いよく開けると、そこには……。 見覚えのある顔が、女子の制服(予備)を抱えて固まっていた。


「……あ、あわわわ。ゆ、悠美ちゃん!? 本物!?」


そこにいたのは、俺に女子寮潜入をそそのかした悪友のケンジだった。 あいつもあいつも、性懲りもなく覗きに……いや、空き巣まがいの潜入をしていたらしい。


だが、ケンジの様子がおかしい。俺を見て、顔を真っ赤にして鼻血を吹いたのだ。


「す、すげぇ……噂通りの美少女……。俺、今決めた。悠美ちゃん、俺と付き合ってくれ!」


(俺だ、バカ! 悠真だよ! 親友だろ!?)


正体を明かしたいが、背後にはヤンデレ三柱が控えている。ここで男だとバレれば、俺もケンジも、白亜館の地下にあるという「秘密の処刑場」送りだ。


「え、えーっと……お気持ちだけ、受け取っておきますぅ……。だから、今すぐ帰ってくださいぃ……」 俺は必死の裏声で、ケンジに「逃げろ」と目配せする。


しかし、三人の温度がマイナス百度まで下がった。


「あら。ゴミが私の悠美に告白したわね……。……殺していいかしら?」 桜の瞳から完全に光が消える。


「不浄な欲情を抱く者は、この世から消去(デリート)するのが神の御心です」 美雪が数珠をメリメリと握りつぶす。


「ゆーちゃんの初めてを狙うなんて、100万年早いんだよ! このドリルで風穴開けてあげる!」 白鳥が突撃を開始した。


「ぎゃあああ! 美少女の周りに化け物が三体いるー!」 ケンジは窓から飛び降り、夜の闇へと消えていった。


「……ふぅ。邪魔者は消えたわ。ねえ、悠真くん」 桜が、震える俺の肩を優しく抱く。


「明日のミスコン、もしあんなゴミみたいな男があなたを見ていたら……。私、我慢できずにステージごと爆破しちゃうかもしれないわ。……だから、ステージの上では、私だけを見つめていてね?」


(学園祭が……学園祭が物理的に終わる予感しかしない!!)


俺は、明日自分が「ミス・カタリナ」に選ばれることよりも、無事に生きて男子寮に帰れることを、月に向かって祈るしかなかった。

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