第四話:洗濯カゴの密会、黒井先生の指先
「白鳥さん、開けなさい。中から変な叫び声が聞こえたわよ」
ドアの外で響く、寮監・黒井先生の冷徹な声。 俺、悠真(ゆうま)は今、白鳥の脱ぎたての服やタオルが詰め込まれた**「大型洗濯カゴ」**の中に、三人がかりで無理やり押し込められていた。
(ぐ、ぐるじい……。白鳥の服、柔軟剤と女の子の匂いがすごすぎて鼻がバカになりそうだ……!)
「あ、あはは! 先生、お疲れ様です! 今、ちょうど前衛的な『叫びの芸術』を練習してたところで……」 白鳥が冷や汗を流しながらドアを開ける。
部屋に入ってきた黒井先生は、眼鏡の奥の鋭い瞳で室内をスキャンした。 そこには、なぜか一緒にいる生徒会長の桜と、巫女の美雪。
「……桜さんに美雪さんまで。こんな夜中に、三人で一体何を?」 「え、ええ。実は、女子寮の防犯体制について、現場の意見を戦わせていたところですの」 桜がもっともらしい嘘をつくが、その手は後ろで俺を隠している洗濯カゴのふたを必死に押さえている。
「ふーん。防犯ねぇ……」 黒井先生がゆっくりと歩き出す。ヒールの音がカツ、カツと俺の心臓に響く。 そして、あろうことか先生は、俺が潜んでいる洗濯カゴの真ん前に立ち止まった。
「……このカゴ、ずいぶんパンパンね。それに、なんだか**『オス』の匂い**がするわ」
(ギクッ!! バレたか!?)
「い、嫌だなあ先生! 私、最近メンズものの香水を使ったアートにハマってて!」 白鳥の苦しい言い訳。しかし、黒井先生は容赦なくカゴに手を伸ばした。
「そう? ちょっと中を確認させてもらうわ。最近、男子寮から変態が忍び込んでいるという噂もあるし――」
先生の指先がカゴのふたにかかる。 俺はカゴの中で、美雪から渡された**「沈黙の御札」**(物理的に口を塞ぐためのシール)を貼られ、必死に息を止めた。
その時、美雪が機転(?)を利かせた。
「先生! 大変です! あっちの廊下に、全裸の不審な影が見えました!」 「……なんですって!?」
黒井先生の注意が逸れた一瞬、桜がカゴを蹴り飛ばしてクローゼットの中へ隠した!
「どっちへ行ったの!?」 「あ、あちらです! 第二浴場の方へ!」
黒井先生が嵐のように部屋を飛び出していく。……もちろん、全裸の不審者なんていない。美雪の捏造だ。
「……ふぅ。死ぬかと思ったわ」 桜が額の汗を拭い、クローゼットを開ける。 カゴの中から、下着を頭に被った状態の俺が転がり出た。
「げほっ、ごほっ! 殺す気か! 匂い攻めと窒息のコンボなんて聞いてないぞ!」
「あはは! 先輩、似合ってるよそのブラジャー!」 「不謹慎です、白鳥! ……でも悠真さん、今の先生の追求を逃れるには、もうこれしかありません」
美雪が真剣な顔で、俺の肩を掴んだ。
「悠真さん。あなたがここにいることがバレないよう、今から**『女装』**していただきます。今日からあなたは、私の親戚の女子生徒『悠美(ゆみ)』ちゃんです」
「はぁぁ!? 何言ってんだお前!」
「いいわね。生徒会長の私が許可するわ。さあ……まずはその無駄に太い眉毛を整えましょうか」 桜が、キラリと光るカミソリを取り出した。
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