蕾編 第1章 転入
森の湖の真ん中には、魔法学院がある。その名もベルデセラータ近代魔女術学院
極彩色の花が描かれた大小様々なステンドグラスが校舎の至る所に取り付けられ、黒々と広がる湖の上ではとりわけ派手であり奇異であるので人目を引きそうだが、
姿隠しの魔法で校舎は隠されているため人間族にその存在が知られる事はない。
校舎は大部分が湖に沈んでおり、ステンドグラスからはゆらゆらと美しい光が差し込んでいる。
「ねえ、セリーヌ」
「なぁに?サラ」
「この学校って本当に綺麗な所ね」
「そう?サラは転入したばかりだからそう見えるんじゃない?」
「どういう事?」
「だってステンドグラスって古臭いし、水越しに届く光は弱いからこの校舎、暗いし寒いのよ」
セリーヌ・メーメットはため息をつき黒いカーディガンを着込んだ。
「まぁ、教室は湖の上に造られてるから暖かいけどね」
「ふぅん。クラスはどんな感じ?みんな優しい人?」
サラ・ホズミは尋ねた。
「んー……」セリーヌは考え込んだ。
数秒思考した後セリーヌは口を開いた。
「まぁまぁ……かな」
「えぇ……」
サラは俯いた。校舎内をセリーヌと談笑しながら案内してもらっている間は新しい学校生活への期待に胸を膨らませていたが、セリーヌの言葉を聞いて不安になった。
サラはダークグリーンの着慣れない制服を着て、靴擦れの痛みを我慢しながらローファーを履いていた。深呼吸をして艶のある黒髪を櫛でとき、前髪を左に分け白いヘアピンで留め直した。
そして教室のドアを開けた。
「転入生だ」
「あんなに背が高いとは思わなかった」
女子生徒も男子生徒も皆サラに注目していた。彼らはサラを無遠慮に眺めまわしそれぞれの仲間に耳打ちをしている。
サラは視線に耐えながら席につき、先程のセリーヌの言葉に不安を感じていた。まぁまぁとはどういう事だろうか。大抵の場合、多少意地の悪い生徒が数人いたとしても殆どの生徒が悪い人物ではないのなら大体みんな優しい、と答えるはずである。私のクラスメイトは一体どんな人達なのだろうか……。サラはぐるぐると頭を巡らせていた。
サラはまた深呼吸をしようとしたがそれは大きなため息に変わった。
「ねぇねぇ、大丈夫?具合悪いの?」
一人の少女がサラを心配し近づいた。
青みがかった肌に豊かな金髪。髪の先は青色の派手な容姿で、快活な印象を与えた。
「私は大丈夫よ」サラは答えた
「それなら良かった!私はニーナ・デ・アンジェリス。あなたの名前は?」
「サラ・ホズミよ。よろしく」サラの表情は自然と柔らかくなった。
ニーナと言葉を交わした事でサラの不安は少し和らいだ。
「サラね!覚えたわ!これよかったら食べて、私からのウェルカムトゥスクール的なお祝い!」
ニーナはピンクの包みを手渡した。
「昨日焼いたの。ビスコッティよ」
「作ってくれたの?ありがとう!」
サラは包みからビスコッティを一つ取り出して口にした。しかしそれはあまりにも硬く焼かれており前歯が折れるかと思うほどだった。少し恥ずかしかったがなんだか可笑しくなってきてクスクス笑いが込み上げてきた。その様子を見たニーナも微笑んだ。
「セリーヌとはもうお友達?」
「うん!あの子もそう思っていてくれてたらいいけど…」
「大丈夫!あの子クールだけどあなたと話しているときほっこりしてたの見た」
サラの緊張と不安は解消された。転入初日に友人が二人もでき、サラは幸せだった。
まじょのつぼみ ユリ @yuri_pisces
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