ばすぼーるふらぐめんつ!! あすとれい ~幻のキャラクターIPゲーム世界に飛ばされて異世界攻略~
手嶋柊。/nanigashira
prologue 囚われのフラグメンツ
魔法と錬金術が発達した世界で、フラグメンツと呼ばれる
*
やむなく強盗団の
「やはりここが『フラグメンツ強盗』たちのアジトか。
……今はこれにかけるしかない、こんな調子じゃ、一体もフラグメンツを使役できる気がしないし」
あわよくば、序盤攻略に有用で強力なフラグメンツを見つけて契約しよう。
檻の中で怯えるクリーチャーたちは、みなフラグメンツであり、猟犬のようなものから人型のまで、様々なのが見受けられ、いずれも疲弊している。
彼は指先に、“ばすぼーるれんきんじゅつ”からなる断片、半球状の“ぶらんくぼーる”を握っていた。
試しに檻の中へ向けてみるも、
[“とうなんぼうし”のまほうけっかいが貼られています]
となり、フラグメンツが所在を確認できるだけで、契約を結べるわけじゃない。
昔プレイしたことのあるドット絵のRPGで自己流最短ルートを開拓しようとしたら倒木や岩で塞がれて通れないことのあったけど、カクヨはまさしくそんな気分を味わっている。
ここまでは想定の範囲内だったが……。
「ものは試しに、作ったものの……こんな異世界だしな」
彼が取り出したフラスコにはいわゆる“王の水”というやつ、取り扱いには厳重注意で、少量ながらも最初に居候した農園から分けてもらった肥料を原料に、初歩の錬金術でも調達することができた。
問題はここが閉所であること、こんなものを金属の柵にかけたなら、まぁ溶けてはくれるだろうけど、それ以前に自分やフラグメンツたちが有毒ガスで危険な目に遭うかもしれない点だ。
顔を覆うものは持ってきたけれど、どれくらい役に立ったものかわからない。
いざなれば内壁を突き崩せるよう、金属製のピッケルは拝借してきたものの、契約するフラグメンツの一番近い檻を選んでやらなければなるまい。
そうこうして暗がりを進むうち、最奥に至ってしまった。周りには大型獣たちが気色だっているのに、中央のそれはひどく静かな檻だ。
「誰?」
掠れた声に導かれるよう、カクヨはその正面へ歩み出た。
「ひっ」
「僕はあの
きみを助けに来た」
(騒がれると面倒だし、言っちまった……女の子?)
檻の中で首輪と手足の枷を厳重に嵌められている。
あれは素肌に触れている以上、檻のように王水なんて使うわけにもいかないのだが、するとどうしたものか。なんで反射的に、助けるなんて希望を持たせるようなことを言ったか。
「うそ。信じられない」
「……それならそれでいい、奴らに気づかれたら、どのみち僕も捕まっておしまいだ」
「本気、なの?」
銀と言ってもよいであろう白髪、白い顔に碧を湛えた彼女の瞳が覗くと、カクヨはあっと声をあげそうになる。
(リプルスメイジ……?)
向こう、現実の世界で投げ売りされていた
☆☆☆☆☆★
【
とは、彼女のことだ。向こうでカクヨが唯一まともに知っているフラグメンツのキャラクターである。持ってたから。
現状最高レアリティのフラグメンツが、こんなところに囚われているなんて、なにがあったのか。
(助けられれば、なにか情報を得られるかも。
王水だけじゃ無謀だけど、やってみる価値はあるのか?)
「どうして私なんですか。もしかして顔、ですか」
「顔?」
「私のこと見て、ここの怖い人たちがそう話してるんです。
それにあなたは、ここにはほかに強力なフラグメンツなんて、沢山いるのに、私だけ」
「――、そんなこと考えてたのか」
カクヨはしばし思案する。
時間もあまりないし、説明は最小限にしたい……となると、下手な誤魔化しもできないな。
「きみが僕のもといた世界の、手掛かりになるかもしれない」
「……手掛かり?」
「あぁ、まだわかんなくていいよ。
とはいえ、僕にできるのは、ここの壁を壊して、檻の柵を溶かすぐらいだ。きみの手足の枷まで、考えてなかった」
「そんな――逃げたらあいつら、気づいて追いかけてきますよ?」
「だからそれをどうするか、考えてる。
錬金術か、魔法か。この世界で考えられるものは全部使って」
「――、私の枷は、私の魔力を封じる枷です。
サモンマスターと契約したら、それがたぶん売買証明?
になって、自動で外れます」
「ほぉ、案外単調な仕組みだな」
「でないと、売れないんでしょう」
強盗団とはいえ、フラグメンツの闇取引での在庫は定期的に掃かなきゃなるまいし、取引における最低限の商品保管システムがそれ、ということだろう。よく見るとほかのフラグメンツたちも首に同様の枷をしている。
彼女のがより厳重なのは、自傷行為などで商品の価値を下げないことが狙いなんだろう。
フラグメンツはサモンマスターのような人間と、システムとしては異なるが、亜人や人型も多いため、人身売買を見せられているような気まずさはあった。
「契約するのか、僕と」
「そのつもりじゃなかったんですか?」
「え、あぁ……助けるって言ったもんな」
カクヨの腑抜けた反応に、想わずウタカタは吹き出していた。
「ぷっ――面白いひとですね、マスターは」
「ええと……なんだけど、さ。
きみと契約するための“ばすぼーる”が、ないんだ」
魔法のばすぼーるには、キャプチャリングと呼ばれる機能があり、低レアリティで未契約な、“ちのう”の低いフラグメンツは、それの同意の有無を無視して半ば強制的に捕獲できないではない。
しかしウタカタのレアリティは☆5、こちらの世界でもそれは変わらず、彼女を所有するには並のバスボールではそも足らないし、この世界の価値あるバスボールでも彼女に強制して従わせることはそうそうできないのだ。
「強盗団の倉庫なら、捜せばあるんじゃありません?
それに、フラグメンツとの契約にバスボールは必須じゃないですよ」
「あれば奴らも、檻なんかでなくきみを封じてる。やはり足りてないんだろう。
あぁ、編成コストできみと行動できるんだよな、けど、僕は素人だから」
「どうてい……?」
「サモンマスターとして駆け出しなんだ。
今だって自分にできることをやってるだけで、戦闘なんてろくにできない」
「そうなんです?
……できればとっくに、こんなとこ正面から潰しますよね」
「悪かったね、とにかく今からやること、順番にいく。
まず僕がここの壁に大きめの穴を作る、外気の通り道ができたら、次はこの薬で柵を溶かすけど、これが出す煙は生き物には猛毒なんだ。それに前後してきみと契約――したら、きみはなにか魔法を使える?」
「早くやりましょう!
水系統の魔法があります、柵に穴があいたら、この建屋ごとぶち抜けますよ!」
「あぁ、そう?」
ウタカタを編成したら、MP《マナポイント》の消費傾向には目を配ることにしよう。ウタカタがその気でも、彼女自身が本当に自分の能力を適切に把握しているかなんてわからないのだし。
柵ごしに、口を塞げる白布を渡す。
「柵からすこし、離れてて」
「柵が壊れたら、契約してくださいね?
絶対ですよ!」
「わかった――布、使わないの?」
「マスターこそ、離れてたほうがいいですよ。
そこ、ぶち抜きますんで」
(本気だったのか)
カクヨは後退しつつ、彼女へ向けて手を翳す。
「『召喚士カクヨの名のもとに、ウタカタ・アリーシャと結ぶ。
「私の名前――えぇ!」
すでに名を知られていたことを当惑しながらも、彼女は頷いて、彼と結ぶ。魔力が彼から彼女へ流れ、拘束が弾けると、彼女の手には杖が握られる。
すでに彼女の目の前に、水球は形成されていた。
「吹き飛べっ――」
無音の静寂の直後、怒涛の崩落が始まる。檻から外壁にかけて拡がった風穴で、連中が気づいて駆けつける前に、カクヨはウタカタの手を引いて逃げ出した。
次の更新予定
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