第13話|隣にいる資格
その日から、
僕とレオンくんの距離は、少しだけ変わった。
手が触れても、離れない。
隣に座るのが、当たり前になる。
それだけなのに、
胸の奥がずっと温かい。
「ルナ」
生徒会室で、レオンくんが僕を呼ぶ。
「はい、レオンくん」
いつもの敬語。
でも、声の奥が違う。
彼は少し迷うように視線を逸らしてから、
僕の方を見る。
「……正式に言わせてくれ」
空気が、張りつめた。
「俺は君が好きだ」
真っ直ぐ。
逃げ場のない言葉。
「守りたいし、手放したくない。
それでも……君が嫌なら、無理はしない」
——選択肢をくれている。
でも。
そんなもの、
最初から存在していなかった。
「……嫌じゃ、ありません」
胸に手を当てる。
「むしろ……レオンくんがいないと、
不安になります」
それを言葉にしてしまうことが、
少し怖い。
でも、言いたい。
「僕でよければ……
その……お付き合い、してください」
一瞬、
彼の目が見開かれた。
次の瞬間。
強く、でも優しく、
抱きしめられる。
「……よかった」
低く、安堵した声。
「拒まれたらどうしようかと」
「そんなこと……」
言いかけて、
自分の言葉に詰まる。
——拒めるはずがない。
彼の腕の中が、
あまりにも安心すぎるから。
「……恋人、ですね」
僕がそう言うと、
レオンくんは少し照れたように笑った。
「ああ。俺の」
その一言に、
胸が跳ねる。
独占されることが、
こんなにも心地いいなんて。
それからの学院生活は、
穏やかで、甘かった。
レオンくんは以前よりも露骨に僕を気にかけ、
視線を外さない。
誰かが近づけば、
自然と間に入る。
「大丈夫です、レオンくん」
そう言っても、
「俺が嫌なんだ」
と、きっぱり言われる。
その強さが、
なぜか嬉しい。
夜。
寮の廊下で、
人目のない場所に引き寄せられる。
「……少しだけ」
そう言って、
額に、髪に、頬に、
ゆっくりと口づけられる。
深くはしない。
でも、確実に逃がさない。
「ルナ」
「……はい」
「君は、俺の恋人だ」
確認するような言葉。
「だから……
俺のそばにいろ」
命令みたいなのに、
拒否したいとは思わない。
「……はい」
自然に、そう答えていた。
胸の奥で、
小さな違和感が囁く。
——これって、健全?
でも、その声は、
彼の温もりにすぐ掻き消えた。
愛されること。
必要とされること。
それが、
何よりも欲しかったから。
月明かりの下。
僕は気づかないふりをした。
この恋が、
少しずつ「依存」に形を変え始めていることに。
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