第7話|近すぎる距離
生徒会に入って一週間。
僕とレオンくんが並んでいる光景は、
いつの間にか「よくあるもの」になっていた。
……なっていた、はずだった。
「なあ」
会計担当の先輩が、書類をまとめながら小声で言う。
「お前ら、仲いいよな」
その言葉に、手が止まる。
「え……そうでしょうか」
「そうだろ。
気づいたらいつも一緒だ」
隣を見ると、
レオンくんは平然と書類に目を通している。
「特に意識してません」
彼は、さらっとそう言った。
その言葉に、少しだけ胸がざわつく。
——意識、してない。
それはそれで、
なぜか落ち着かない。
「でもさ」
別の先輩が口を挟む。
「ヴァルディスって、昔から他人に興味なかったよな」
「必要最低限、って感じで」
空気が、微妙に変わる。
「それが今は?」
視線が、僕に集まった。
居心地が悪くて、
思わず視線を落とす。
すると。
「だから何だ」
レオンくんが、ぴしりと言った。
「仕事に支障はない」
「いや、そうなんだけどさ」
先輩は肩をすくめる。
「……大事にしすぎじゃないかって話」
その瞬間、
レオンくんの指が、ぴたりと止まった。
ほんの一瞬。
でも、確実に。
「守ってるだけだ」
低い声。
「必要だから」
その言い方が、
妙に断定的で。
それ以上、誰も何も言わなかった。
——静かすぎる沈黙。
僕は、胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じていた。
放課後。
生徒会室を出ると、
廊下には夕方の光が差し込んでいた。
「……さっきの」
僕が切り出す。
「気にしなくていい」
レオンくんは、歩きながら言った。
「周りがどう思おうと関係ない」
「でも……」
言葉に詰まる。
「レオンくんの立場を、悪くしてしまうんじゃ……」
その言葉で、
彼は足を止めた。
振り返って、僕を見る。
「ルナ」
名前を呼ばれるだけで、
背筋が伸びる。
「俺は、自分で選んでる」
真っ直ぐな視線。
「君のそばにいるのは、義務でも同情でもない」
心臓が、強く鳴る。
「……だから、離れるつもりもない」
断言。
その言葉が、
怖いほど、嬉しかった。
「……ありがとうございます」
思わず、そう言ってしまう。
「感謝されることじゃない」
そう言いながら、
レオンくんは少しだけ、困ったように笑った。
「ただ……」
一拍、間。
「君が、俺以外の誰かに囲まれてるのを見ると、
少し……落ち着かないだけだ」
それは、冗談めいているようで。
でも、冗談じゃない。
胸の奥が、じわっと熱くなる。
「……僕は」
言いかけて、言葉を飲み込む。
今は、まだ。
この関係に名前をつけるのが、
少しだけ怖かった。
でも。
廊下を並んで歩く影は、
明らかに二つで一つだった。
——周囲が気づくほどに。
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