第二話『新しく踏み出した一歩は、過去の足跡を辿らない』


■□□□□






「僕たち四人で、この国を変えよう!」


エルドはそう言って手を出した。


「生まれですべてが決まってしまういまの社会は間違ってるわ」


エリナはその上に手を重ねた。


「これ以上不正のために手を汚してたまるか」


バルディはその上に拳をかざした。


「――――ヴェラ?」


三人は、立ち竦む私を見つめた。


「君はどうする?」


私は涙をこらえる。

懐かしい公爵家の庭園。よく四人でお茶をした東屋の下、革命の決意を確かめる三人。

エルドは頭からつま先まで、きちんと整えた身なりをしている。

エリナの艶やかな金髪は、背中いっぱいに生き生きと広がっている。

私の腕の倍ほども太いバルディの右腕は、まっすぐ力強い拳を掲げている。

間違いない。

私は戻ったんだ。

革命をはじめた、五年前に。


あふれ出しそうな感情をすべて飲みこみ、私は両手をめいっぱい広げ、三人の手を包み込む。


「――――私も戦う」


三人の手は温かった。

三人は確かに生きていた。


(神よ)


私は神に、心からの感謝を捧げた。


(貴方はたしかに実在した)

(貴方はたしかに、奇跡を起こしてくださった)


私たちはまだ革命を始めていない。

すべてを始めた五年前に、神は私を戻してくれた。

夢じゃない。三人の手の温かさは本物だ。その瞳に宿る強い意思も、あの日見たものと同じだ。

神は私の願いを叶えてくださった。

やりなおす機会をお与えになってくださったのだ。


「私は、今度こそみんなと最後まで戦う。――――誰一人死なせない。必ず、革命を成功させる」


私の立てた誓いに、三人は怪訝な表情を浮かべる。


?」


私は首を振り、当時ずっと浮かべていた、気弱な笑みを作って見せる。


「私なんかじゃ、みんなの役に立つかわからないけど」


そう、事実、私はなんの役にも立てなかった。

傷つくことも苦しむこともなく、安全地帯でみんなの無事を祈っていただけだった。


(だから今度は、私は誰よりも傷つかなければならない)


一番苦しんで、一番働いて、一番汚れて、そのうえで革命を成功に導かなければならない。

それが私に課せられた使命だ。

みんなと、神様へ、果たさなければならないお返しだ。


「役に立たないなんてことはない」


私の弱音を、バルディは否定してくれる。


「そうだよ。ヴェラがいてくれて、心強いよ」


エリナは頼もしいほど快活な笑顔を向けてくれる。


「そうだ。僕たち四人が揃っていれば、為せないことはなにもない!」


エルドの言葉に、私たちは頷き合う。


「革命を起こそう!僕たちの手で、この国に自由と平等をもたらすんだ!」


この国に革命を起こし、腐敗した政権を打倒すること。

困窮した民衆を救うことを。

それが私たちの立てた誓いだった。


同時に私は、誓いを立てる。

神に。

そして私自身に。

絶対に彼らを死なせない。

どんなことをしてでも、彼らを革命の英雄にして見せる、と。

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