第二話『新しく踏み出した一歩は、過去の足跡を辿らない』
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「僕たち四人で、この国を変えよう!」
エルドはそう言って手を出した。
「生まれですべてが決まってしまういまの社会は間違ってるわ」
エリナはその上に手を重ねた。
「これ以上不正のために手を汚してたまるか」
バルディはその上に拳をかざした。
「――――ヴェラ?」
三人は、立ち竦む私を見つめた。
「君はどうする?」
私は涙をこらえる。
懐かしい公爵家の庭園。よく四人でお茶をした東屋の下、革命の決意を確かめる三人。
エルドは頭からつま先まで、きちんと整えた身なりをしている。
エリナの艶やかな金髪は、背中いっぱいに生き生きと広がっている。
私の腕の倍ほども太いバルディの右腕は、まっすぐ力強い拳を掲げている。
間違いない。
私は戻ったんだ。
革命をはじめた、五年前に。
あふれ出しそうな感情をすべて飲みこみ、私は両手をめいっぱい広げ、三人の手を包み込む。
「――――私も戦う」
三人の手は温かった。
三人は確かに生きていた。
(神よ)
私は神に、心からの感謝を捧げた。
(貴方はたしかに実在した)
(貴方はたしかに、奇跡を起こしてくださった)
私たちはまだ革命を始めていない。
すべてを始めた五年前に、神は私を戻してくれた。
夢じゃない。三人の手の温かさは本物だ。その瞳に宿る強い意思も、あの日見たものと同じだ。
神は私の願いを叶えてくださった。
やりなおす機会をお与えになってくださったのだ。
「私は、今度こそみんなと最後まで戦う。――――誰一人死なせない。必ず、革命を成功させる」
私の立てた誓いに、三人は怪訝な表情を浮かべる。
「今度こそ?」
私は首を振り、当時ずっと浮かべていた、気弱な笑みを作って見せる。
「私なんかじゃ、みんなの役に立つかわからないけど」
そう、事実、私はなんの役にも立てなかった。
傷つくことも苦しむこともなく、安全地帯でみんなの無事を祈っていただけだった。
(だから今度は、私は誰よりも傷つかなければならない)
一番苦しんで、一番働いて、一番汚れて、そのうえで革命を成功に導かなければならない。
それが私に課せられた使命だ。
みんなと、神様へ、果たさなければならないお返しだ。
「役に立たないなんてことはない」
私の弱音を、バルディは否定してくれる。
「そうだよ。ヴェラがいてくれて、心強いよ」
エリナは頼もしいほど快活な笑顔を向けてくれる。
「そうだ。僕たち四人が揃っていれば、為せないことはなにもない!」
エルドの言葉に、私たちは頷き合う。
「革命を起こそう!僕たちの手で、この国に自由と平等をもたらすんだ!」
この国に革命を起こし、腐敗した政権を打倒すること。
困窮した民衆を救うことを。
それが私たちの立てた誓いだった。
同時に私は、誓いを立てる。
神に。
そして私自身に。
絶対に彼らを死なせない。
どんなことをしてでも、彼らを革命の英雄にして見せる、と。
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