第29話 生死を賭けた制覇


広間中央、黒紫の規格外モンスターが咆哮する。

その威圧は、これまでのどの敵よりも圧倒的だ。


クロウは息を整え、短剣を握り直す。

《遅延感知》《空間把握(狭)》が、全身を張り巡らせ、敵の攻撃軌道を正確に捉える。


(……前回の経験をすべて生かす)


#### 瀕死寸前の攻防


モンスターの前肢が振り下ろされ、床全体が衝撃で揺れる。

一歩でも踏み込めば、致命傷。


クロウは《微調整》で重心を傾け、攻撃を受け流す。

床の段差と壁の反射を利用し、力を最小限で分散。


だが、一撃が腕をかすり、血が滲む。

痛みと疲労で体力は限界に近い。


(……ここで倒れるわけにはいかない)


#### 戦術応用の極致


クロウは一歩後退し、広間の構造を利用して攻撃を誘導する。


・ 床のひび割れを踏ませ、敵のバランスを微妙に崩す

・ 障害物を盾代わりにし、衝撃波を反射

・ 《蓄積変換》で敵の行動パターンをリアルタイムで更新

・ 攻撃を受け流しつつ、情報を次の手筋に反映


力押しでなく、動きを制御する戦術が最大限に機能する。


#### 制覇への決着


最後の咆哮と共に、モンスターは一度膝をつき、広間の中央で動きを止める。

クロウは間合いを見極め、慎重に短剣を置き、息を整える。


(……勝った、力じゃなくても制御できた)


モンスターは倒れることはないが、行動不能となり、隠し階層の制覇が成立する。


台座に置かれた宝箱とレア素材を手にし、クロウは勝利の実感を胸に刻む。


#### 心中の確信


血まみれの体を支えながら、クロウは深呼吸をする。


(……生き延びた。

 ダメスキと観察、戦術があれば、未知の敵でも戦える)


隠し階層。

規格外モンスター。

そして、最弱判定の冒険者は、知略と生存能力で勝利を手に入れた。


広間に静寂が戻る。

だが、クロウの目には次の迷宮への意志が確かに光っていた。

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