第20話 歩みと認知


中層第三区画の最深部。

クロウは短剣を握り、足元の床を慎重に確認する。


数度の交錯と駆け引きを経て、前方には最終の小型ボス――守護者のような魔獣が立ちはだかる。


《微調整》《遅延感知》《空間把握(狭)》

スキルの連携が、頭の中で滑らかに回る。


(……前回の自分とは違う)


#### 最終段階の制覇


守護者の攻撃を誘導しつつ、重心の微調整でバランスを崩す。

小さな段差や障害物を巧みに利用し、攻撃を最小限で回避。

そして、蓄積変換で情報をリソースとして活かす。


一度も真正面から力任せに勝負せず、

敵の行動を制御したまま、迷宮奥の宝箱まで到達。


(……やった)


宝箱を開けると、

小型ボス討伐報酬と、魔力強化素材が入っていた。

直接戦わずとも、迷宮制覇に必要な“成果”は得られる。


クロウは短く息をつき、手を宝箱に置いたまま微笑む。


#### ギルドでの報告


街に戻ると、クロウはギルドに報告書を提出する。


「中層第二区画、制覇完了。損害なし、追加報酬獲得済み」


受付係は、目を細めて書類に目を通す。

以前のクロウなら、軽くあしらわれただろう。

だが今回は、僅かに言葉が変わった。


「……なるほど、やるじゃないか」


小さな称賛。

だが、クロウにとっては十分な手応えだった。


#### 心中の整理


宿に戻り、月明かりの下で短剣を置く。


(……少しずつだ)


中層迷宮での小型ボス制覇は、

力ではなく、戦術とスキルの連携で勝ち取ったもの。


ゼインにはまだ遠く及ばない。

だが、前回より確実に差は縮まった。


クロウは深呼吸をし、短剣に触れる。


(……次は、もっと遠くまで行ける)


ギルドの評価は小さく動いた。

だが、クロウにとって本当に重要なのは、

自分自身の成長の確実さだ。


中層迷宮。

ゼインとの距離。

そして、自分の道。


最弱判定の冒険者は、

確実に“差を埋める歩み”を続けていた。

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