第18話 静寂の前


宿の一室。

窓の外では、夕暮れが街を赤く染めている。


クロウは机に向かい、図解を広げた。

中層迷宮のマップ。

敵の行動履歴。

前回のゼイン戦の記録。


(……間違いなく、相手は強い)


力も、速度も、魔力も。

前回の直接対決で痛感した。

一歩間違えれば命を落とす。


だが、逆に言えば、パターンは明確だ。


#### 心理の整理


クロウは深呼吸し、頭の中で整理する。


・ ゼインの攻撃は、基本的に圧倒的。

・ 動きは速く、魔力消費は大きい。

・ 長期戦には向かない。


(……なら、削って、逃げて、蓄積すればいい)


以前なら「どう戦うか」に意識が向いたが、

今は「生き残ることが勝ち筋」に焦点がある。


勝利とは、力で相手を倒すことではなく、

情報を得て、次の行動に反映させることだ。


#### 戦術構築


紙に、順番を線で結ぶ。


1. 観察 → 位置・行動・魔力消費量

2. 誘導 → 床・地形・環境利用

3. 微調整 → 重心・剣の軌道

4. 蓄積変換 → 行動のリソース化

5. 撤退・回避 → 必要に応じて安全確保


(……これが、今できる最大限)


スキルは単体では弱い。

だが、連携させれば、一つの流れとして敵を制御できる。


小型ボスでの成功が、確信をくれた。


#### 心理描写


クロウは窓の外を見た。

街の灯りが点々と光る。


(……怖い)


力の差は、圧倒的だ。

でも、恐怖ではなく、緊張として感じられる。


敗北の記憶が、動きの精度を上げる。

冷静さと緊張感が、両方揃っている。

それが、今の自分の武器だ。


拳を握る。

短剣に触れる指先に力が入る。


(……次は、負けない)


完全勝利ではない。

しかし、前回より一歩、差を埋めることができる。


クロウは息を整え、短剣を腰に差した。


中層迷宮。

ゼインとの再戦。


全ては、今から始まる。


静かな決意が、胸に灯る。

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