第17話 再びの対峙
中層第二区画。
魔獣の気配は前回より少ないが、緊張感は張り詰めていた。
クロウは短剣を握り、ゆっくり足を進める。
《空間把握(狭)》で広間の形状を確認し、床の強度、段差、障害物を頭に入れる。
《遅延感知》で魔獣の行動履歴を再計測。
前回の戦闘で失敗したポイントを、ひとつずつチェックする。
(……今回は負けない)
広間の中央。
小型ボス――石と金属で構成された魔獣が、前回同様の位置にいた。
ただし今回は、クロウは戦闘に飛び込まず、観察から入る。
#### 戦術の実践
1. 観察
魔獣の首の傾き、脚の動き、攻撃タイミングを《遅延感知》で把握。
反射ではなく、情報を蓄積してから動く。
2. 誘導
魔獣の攻撃範囲を読んで、床の弱点を活用。
直接攻撃は避け、敵の位置を自分の有利な位置に誘導する。
3. 微調整
攻撃はせず、短剣を振る軌道と足の角度で重心を調整。
魔獣の踏み込みや振り下ろしをかわすだけで消耗を最小化。
4. 蓄積変換
行動や撤退をすべて内部リソースとして変換。
次の動きに反映されるため、戦闘が長引いても精度は落ちない。
小型ボスが踏み出す。
前回は避けるだけで精一杯だったが、今のクロウは違う。
足元を微かにずらし、剣で床の小さな段差を利用。
魔獣のバランスが崩れ、踏み込みがわずかに遅れる。
「……これだ」
次の瞬間、魔獣の背後に回り込み、弱点の継ぎ目を確認。
刃は通らないが、動きの制御には成功。
二度目の踏み込みで、さらに重心を崩す。
魔獣は半歩後退。
それだけで、圧力は大きく減少した。
クロウは呼吸を整え、同じ動作を繰り返す。
数分後――
魔獣は完全に動きを制限された状態になった。
《遅延感知》の情報、微調整による重心制御、空間把握による誘導、蓄積変換による精度保持。
これらのスキル連携が、小型ボスを「倒さず制御する」戦術を可能にした。
勝利の定義は、力による破壊ではなく、状況の掌握。
クロウは短剣を下ろす。
「……やった」
派手な一撃はない。
だが、明らかに前回とは違う。
小型ボスに対して、完璧ではないが安全な勝ち筋を積み上げたのだ。
迷宮を後にするとき、クロウは静かに微笑んだ。
(……少しずつ、やれる)
中層迷宮。
ゼイン戦に向けての下準備は、
着実に進んでいた。
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