第16話 蓄積と連携
宿の部屋に戻ると、クロウは短剣を机に置いた。
壁には、前回の図解やスキル整理の紙が散らばっている。
(……やっぱり、差は大きい)
力では到底及ばない。
速度でも魔力でも勝てない。
それは、迷宮内での戦闘記録で明確になった。
だが、諦めはしない。
(なら、違う形で戦うしかない)
クロウは、紙を一枚取り出し、スキルを改めて分類する。
#### スキルの再整理
1. 《微調整》
単体攻撃での精度向上。
今までは攻撃回避補助が主だったが、敵の攻撃軌道修正にも利用。
2. 《遅延感知》
単なる警告ではなく、敵行動履歴の蓄積用として運用。
攻撃を受ける前に反応するのではなく、反応から次の動きを導く。
3. 《空間把握(狭)》
索敵だけでなく、地形把握・敵の位置関係把握用に。
隠し通路、罠、足場の弱点など、戦術に直結。
4. 《蓄積変換》
戦闘中の失敗や撤退も、次の行動のリソースとして活かす。
5. 《劣化耐性》
長期戦の持久力確保。
消耗を最小化し、連戦や探索に備える。
クロウは、紙の上で線を引く。
(……順番が重要だ)
攻撃する前に観察。
行動後に蓄積。
次の動きに微調整。
地形を利用して消耗を減らす。
それらを、すべて連鎖させる。
言葉にすると単純だが、実際の動作では、数秒で複数の情報を処理する必要がある。
《蓄積変換》が反応するたび、体が軽くなるような感覚。
前回の敗北が、確実に「リソース」として残っている。
クロウは短剣を握り、壁際で動作を確認する。
小さな動き。
足の角度。
体重移動。
剣の軌道。
《微調整》で修正。
《空間把握(狭)》で環境を確認。
《遅延感知》で仮想敵の動きを読み取る。
《蓄積変換》で反応を残す。
数度の模擬動作で、体が覚えた。
(……前より、確実にできる)
小さな勝ち筋を一つずつ確認する。
ゼインのような圧倒的力はない。
だが、削りながら勝つ方法は、見えてきた。
夜。
窓から差し込む月明かりを浴び、クロウは拳を握る。
(……次は、もっと遠くまで行ける)
敗北は消えない。
だが、それは行動の設計図になった。
最弱判定の冒険者は、
ダメスキルを単なる“弱い能力”として使うのではなく、
戦術の中核として活かす術を、初めて理解した。
中層迷宮への挑戦は、
まだ始まったばかりだ。
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