第14話 小さな前進
朝の光が、宿の窓から差し込む。
クロウは目覚めと同時に、迷宮のことを思い浮かべた。
(……今日なら、やれる)
昨日の図解。
スキルの組み直し。
行動パターンのシミュレーション。
紙に書き出した“勝ち筋”が、頭の中で反復される。
《微調整》《遅延感知》《空間把握(狭)》
順序とタイミングを、意識する。
出発前に、短剣を拭き、装備を整える。
軽く息を整え、階段へ足を踏み出した。
中層第二区画。
魔獣の数は多い。
だが、今回は数秒で判断する。
(まずは観察)
魔獣が巡回する軌道を、遅延感知で確認。
軌道のタイミング、反応速度、攻撃パターン。
《微調整》で、自分の重心を整える。
踏み込みの角度。
剣の軌道。
――一体目。
倒すというより、誘導する。
弱点ではなく、行動の隙を作る。
二体目も同様。
連携型の小型魔獣も、隙を突いて回避しながら対処。
(……効率的だ)
息は荒いが、動きは安定している。
無駄な力を使わず、敵の攻撃は最小限で回避。
広間の奥。
前回ゼインが現れた地点。
《空間把握(狭)》が、以前より広く、正確に情報を返す。
微細な障害物、隠し通路の兆候まで、感覚で把握できる。
(……見えてきた)
小さな段差、罠の位置、隠し通路の予兆。
すべてを頭に入れ、行動に反映する。
《蓄積変換》も反応。
前回の失敗と、今日の成功が重なり、内部リソースが増幅している感覚。
一歩ずつ進む。
小型魔獣の群れも、以前より早く制御できる。
やがて、前回の小型ボスがいた部屋に到達。
今回は、戦闘ではなく通過を選ぶ。
(……倒す必要はない)
敵の動きを観察し、勝ち筋だけを確認。
必要な情報を取ったら、迷宮を後にする。
地上に戻ると、夕暮れの光が街を染めていた。
ギルドの受付で報告する。
「中層、第二区画まで進行。
戦闘は最小限。損害なし」
反応は薄い。
だが、以前のように軽視されることもない。
小さな進歩。
だが、クロウにとっては確実な成果だった。
夜、宿に戻ると、短剣を置き、紙を広げる。
(……できた)
昨日の図解を塗り替える。
ダメスキルたちは、力ではなく、連携と理解で勝ち筋を作る。
小さな成功。
だが、それは確実な一歩。
最弱判定の冒険者は、
“差”を痛感したまま、
しかし自分だけの道を切り開き始めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます