第12話 埋まらない距離
遭遇は、偶然だった。
中層第二区画。
視界が開けた交差点で、
クロウは足を止めた。
――人の気配。
《遅延感知》が、遅れて反応する。
敵意ではない。
だが、圧がある。
「……?」
前方から現れたのは、
三人の冒険者。
その先頭に――
ゼイン・ヴォルグがいた。
「……あ?」
ゼインが、わずかに眉を上げる。
「ああ、さっきの単独の……」
言葉の端にも、感情が乗らない。
思い出した、というより
記憶の棚から拾い上げただけだ。
「こんなところで、何してる?」
責めるでもなく、
興味もない。
クロウは答えた。
「調査依頼です」
「へえ」
ゼインは軽く笑った。
「ここは、ソロ向けじゃないぞ」
事実だ。
反論できない。
そのとき――
背後の通路から、魔獣の群れが現れた。
四体。
連携型。
(……来る)
《遅延感知》が、
一気に情報を返してくる。
だが――
処理しきれない。
ゼインが、前に出た。
「下がってろ」
言い切り。
次の瞬間、
魔力が爆ぜた。
派手な斬撃。
光。
轟音。
一体目が、形を失う。
二体目、三体目。
連続。
残り一体が、逃げようとした瞬間、
ゼインの仲間が仕留めた。
――終わり。
戦闘は、数秒だった。
クロウは、
一歩も動けなかった。
(……選択肢が、なかった)
判断する前に、
すべて終わっていた。
「……助かりました」
そう言うしかない。
ゼインは肩をすくめた。
「いや?
邪魔だったら困るからな」
悪意はない。
本心だ。
「忠告しとく」
ゼインが、こちらを見た。
「ここは、お前の場所じゃない」
断定。
「最下層で、コツコツやってろ。
それが身のためだ」
クロウは、何も言わなかった。
言えることが、ない。
実力。
経験。
スキル。
どれを取っても、
今は――
話にならない。
ゼインたちは、先へ進んだ。
残された通路。
静寂。
クロウは、拳を握った。
(……完敗だ)
勝負にすら、なっていない。
だが――
心は、折れていなかった。
(あいつは……“倒し切る”戦い方だ)
速い。
強い。
圧倒的。
だが、消費も激しい。
対して、自分は――
見て、削って、残す。
(……埋まらない、か?)
今は、無理だ。
だが、
同じ道を走る必要はない。
クロウは、深く息を吐き、
来た道を引き返した。
今日は、撤退。
だが、次は違う。
中層迷宮での完敗は、
最弱判定の冒険者に、
明確な「目標」を刻みつけた。
――第3章は、ここから本番になる。
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