第7話 わからなかったもの
その違和感は、戦闘中ではなく、
何も起きていない瞬間に訪れた。
迷宮の通路。
魔獣の気配はない。
クロウは、壁際で足を止めた。
(……何だ?)
《遅延感知》が、何も告げていない。
危険ではない。
だが、《空間把握(狭)》が、
“いつもより多く”の情報を返してくる。
(……壁、厚い?)
普段なら、空洞の有無しか感じ取れない。
だが今は――
壁の内側。
石の層。
その奥に、歪みのようなものがある。
「……気のせい、じゃないな」
魔力消費は、変わっていない。
範囲も広がっていない。
それなのに、情報が細かい。
(精度が……上がってる?)
理由は、すぐには浮かばなかった。
歩き出そうとした瞬間、
《蓄積変換》が、今までにない反応を示した。
――内部リソース、臨界付近。
文字ではない。
だが、意味だけが頭に流れ込む。
「……臨界?」
初めて聞く感覚だった。
剣を抜くでもなく、
魔獣が現れるでもない。
それでも、何かが“切り替わる”気配がある。
(今まで、溜めてただけ……?)
無駄な行動。
失敗。
撤退判断。
それらが、単なる経験ではなく、
内部に蓄えられていた。
クロウは、壁に手を当てた。
《微調整》を、使う。
対象は、壁そのものではない。
自分の感覚。
一瞬、世界が静止したように感じた。
――見える。
壁の奥。
僅かな空洞。
そして、その奥に、通路。
「……隠し、だな」
確信があった。
《空間把握(狭)》が、
“空洞がある”ではなく、
“どう繋がっているか”を伝えてくる。
(進化……?)
スキル名は変わっていない。
数値も、表示されない。
だが、使い勝手は別物だ。
(これが……ダメスキルの正体?)
派手な変化はない。
爆発的な力もない。
ただ、理解できる範囲が広がった。
「……面白い」
クロウは、壁を叩いた。
反響音が、微かに違う。
この先に、何かがある。
慎重に、だが迷いなく、
クロウは隠し通路へと足を向けた。
ダメスキルと呼ばれた能力は、
静かに、牙を剥き始めていた。
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