Case.16【ブラック・ジョーク】
惑星ホーリック、その星の住人ホーリック星人達は大きく二種類に分けられる。
ひとつは働き者。働くことが趣味であり、働くことこそが生きがいである、といった具合だ。惑星ホーリック自体、科学技術レベルこそ高かったもののそれに情緒がついて来なかったのか、娯楽らしい娯楽が存在しなかったのも影響しているだろう。ともかく彼らは頑丈な身体を活かして朝も昼も夜も働いていた。
そしてもうひとつのグループであるホーリック星人は、そんな『働き者』のホーリック星人を"使う"側。つまりは経営者、であるが彼らもとても働き者ではあるのだが、彼らの頭の中にはいかにお金を稼ぐか、という事で常に占められていた。
特に働き者のホーリックは低賃金で長時間の労働をさせても壊れず文句も言わず、オマケに彼らはただ働き者なだけでなく仕事が丁寧で正確であったから彼らの提供するサービスや商品は他惑星の住人にも高評だった。経営者にとってこれほど効率よく稼ぐ"ツール"は存在しない。
しかしそんな経営者ホーリックに思わぬ逆風が吹き荒れる。他惑星からの『なんとか銀河労働基準監督』だのなんだのがやってきて「この惑星の労働環境は劣悪であり、我々の基準に合わせるべきである」なんて言い出したのだ。
当初は労働者側のホーリックもそれほど耳を傾けてはいなかったものの、元々が規律や規範を守る質である彼らは他惑星の労働時間や賃金だったりを知って驚愕。
とどめに同時期、他惑星から娯楽が輸入されると遊ぶ楽しさを学んだ労働者達は徐々に待遇改善を求め経営者達に抗議を始めた。終いには存在すらしなかった労働組合を結成するとストライキまで始めたのだ。
勿論(?)経営者ホーリック達はこれを断固拒否、うんたら銀河労働基準監督へも『我々には我々の基準がある』と主張し労働ホーリック達の労働環境の改善を行わなかったし、なんなら見せしめの如くより締めつけを強くした。
そんな状況に多くの労働ホーリック達はうんたらかんたら労働基準監督の手伝いもあって他惑星へと脱出、惑星ホーリックのメイン労働層がすっぽり抜け落ちてしまった。
そんな状況で会社や工場が回るはずもなく経営者ホーリック達は頭を抱えていた。
しかし、そんな彼らに手を差し出すような存在が現れた。ホーリック星人に似た姿のそれらは他惑星へと『旅立った/夜逃げした』ホーリック達の代わりに働くと言うのだ。
経営ホーリック達もこれには大喜び。
しかしまた厳しい条件で働かせると、前回の二の舞になると(彼ら基準で)抑えた労働時間やそれなりの賃金を支払った。これが功を奏したか、新人ホーリック(?)達はこれに文句を言うどころか感謝さえしている。
ならもう少しキツくしてもいいかと、こっそり労働時間を伸ばし、賃金を減らし。しかしこれにも彼らは抗議の声を上げないので更に――なんてことを続けているうちに気づけば新人達の労働時間は休憩時間どころか帰宅する時間がないまでに延びていた。
残念ながらというかもはや当然の流れというかで『帰宅出来ないなら金を使う必要もない』と社内でしか使えない謎の通貨を給与として支払われ実質タダ働き状態である。
そんな極限状態であっても彼らは文句ひとつ言わなかった。
言わなかったが……バタリ、という音が社内に響くと、後を追うようにそこかしこ、惑星内でバタバタとドミノ倒しのように音がし始めた。
結局、労働を超えて拷問のような状況に耐えきれなくなった新人ホーリック達は地面に伏したまま冷たくなって、形すら保てなくなってしまった。
そんな状況を見た経営ホーリックはこうボヤいたという。
「俺が何をしたっていうんだよ……」
―終(電)―
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