Case.14【友達になろうよ】

 宇宙の隅っこにあるような暗い星で、僕らは待っていた。本当は僕らから会いに行きたかったけど、この星の重すぎる重力がそれを許してくれなかったから。

だからたまに通りすがりのひとがやって来てくれると、すっごく嬉しいんだ。

 尻尾を揺らして挨拶して、小さな手足でダンスを踊って。ほら、どう?僕らはこんなに可愛いよ?だから友達になろうよ!

友達だから、一緒に遊んで、手をつないて、歌って、"ひとつ"になる。

あぁ、嬉しいな。もっと、もっと、友達を増やしたい。だってそれは、とっても幸せなことだから。

――そんな時、君は来てくれた。

あぁ、君もそうなんだね。君も友達を増やしたいんだ。なら一緒に行こう、この寂しくて凍えそうで、空っぽの星を飛び出して。友達に会いに行こう。

 


 やぁ、初めまして!

早速だけど、僕と友達になろうよ!




『レポート:識別ID-59103【可愛らしいぬいぐるみ】について』


・脅威判定:Yellow


・外観:59103によって多少見た目が変わりますが、基本的にファンシーな羽の付いた愛らしい動物のぬいぐるみの見た目をしています。また、鳴き声や匂いについても全てが愛らしく感じられます。声は上記の動物の鳴き声に加え、対象者が判別出来る言語で話しかけて来ることも判明しています。


・生態:59103の認識出来る範囲にターゲットとなる生命体が現れた時、59103はその愛らしい姿と鳴き声を使って対象に近づきます。十分に対象に近付くことに成功した場合、59103は尻尾や耳を揺らしてダンスのようなことをしたり、歌を歌う等して対象と"友達"になろうとします。この行為を受けた対象はそれを好ましく感じ友達となります。

しかし、一度59103と友達になってしまうと59103と離れがたくなり仕事や私生活にも支障を来す為、如何なる場合でも接触は推奨されません。


・59103は一般の職員がうっかり友達になってしまわぬよう、管理棟Gの最奥

に■■で出来た特殊防壁内で管理されています。


・59103に対する実験は現在例外なく受け付けていません。


**これ以上の情報はオフィサークラスの職員にしか開示されません。知りたい場合にはクラス認証を実行して下さい**

**認証成功、秘匿情報を開示します**


・初めに59103と思わしき被害が確認されたのは『孫が化け物に襲われた』と耳の遠い老眼鏡を掛けた婦人からの通報によるものです。当初は認知症による呆けと思われ相手にされていませんでした。しかしその後も周囲で失踪事件が相次いだ為特殊部隊が調査を開始したところ、53103によって町民が"友達"にされている瞬間に遭遇、これを鎮圧しました。


・59103を眼鏡やゴーグル等のグラスやガラスを通して見た時、愛らしい姿の時と共通しているのは背部にあるファンシーな羽だけです。他はヌメヌメと光沢のある触手の群体に昆虫の様な脚、ひとの口や腕が一組ずつ存在するおぞましい姿にうつります。実際にこれを目撃した職員の一部は心的外傷を負う者もいます。

同様に補聴器、イヤホン等の音声機器を通して耳に入る59103の発する鳴き声(と思わしきノイズ)は『生存本能に訴えかけるような恐ろしい断末魔のようだ』と記録されています。


・59103は恐らく認識改変能力が備わっており、これを用いて対象とって『愛らしくて好ましい』姿に見せている可能性があります。


・59103は上記の能力で対象に十分に近づくと、触手や腕で捕縛した後に口で捕食行動を行う。当然、捕食された対象は死亡するが、その死体が少しの間を置いて59103の様な姿に変化(これを59103-2と呼称)59103-2は59103と同様の能力・生態を持っています。


・59103及び59103-2に対して火器の使用による一時的な鎮圧は有効です。しかし完全に生命活動を停止させる方法は今のところ見つかっていません。これは超高温による焼却や薬品による溶解等の如何なる方法でも同様であり、損傷した59103から目を離した一瞬のうちに元の状態に再生します。


・再生の瞬間は超ハイスピードカメラのコマ送りを使用しても確認出来ないほど一瞬で行われており、今のところ再生を阻止出来た方法は59103を視認し続ける以外にありません。


・59103の認識改変を受けた対象は 59103に対し好意的印象を受けます。これが軽微な内は、認識改変を受けていない第三者が59103から対象を引き離すことが可能です。しかし59103に十分に接近され強く認識改変を受けた場合、59103と離れる事を強く拒絶し、引き剥がそうとする相手に危害を加え死亡させることさえ躊躇しません。


・現在59103を直接、また間接的にも認識出来ないよう■■性の防壁で囲まれ、変化を確認するための監視カメラがついた部屋で管理されています。

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