Case.5【死は救済】
【惑星腫瘍】は自らの種の拡散の為に、『獲物/ターゲット』の星に住む生命体の"欲求""欲望"を満たし、自ら破滅の種を撒かせて効率よく星を喰らい尽くす。
最期には星の命を火花としてさらなる宇宙へと災厄を広めていく。
今回の惑星腫瘍もそんな本能に基づき侵攻を開始した。それがどれだけ皮肉な形で終わるとも――。
獲物の名前は『タワー』と呼ばれる非常に特異性に満ちた星。
この星には『死という概念』が存在しない。生命は産まれた瞬間からそこに存在し続け、無機物でさえその形をすり減らすこともなく在り続ける。
そこに産まれた知性体『ハングドマン』達も例外ではなかった。彼らは種の繁栄という生命の基本的欲求すら持たず、しかし植物のような生き方を出来ぬ憐れとすら言える種族であった。長く続く何一つ変わらない日々。食べることも寝ることも不要、死がないことで外敵すら居ない環境において最高の娯楽は『死の探求』
他惑星より取り寄せた毒物や劇薬を摂取し"死に至る"術を探すことだ。
永遠の命を求めて足掻き、時に争いすら起こす星がある中で、彼らは永遠を終わらせる旅を続けている。持たざる者が持つ者へ嫉妬や羨望を持つことは往々にしてあるが、皮肉なことに持つ者が持たざる者へ嫉妬する逆転現象であった。
いや、『死を持たない』ハングドマン達が『死を持つ』生命体に嫉妬や羨望を送っているとも言い換えられるか。
ともかくそんな彼らの元に惑星腫瘍の種は舞い降りる。
それはあからさまな"危険信号"を発している形で現れた。耳障りな高周波を鳴らし、有毒生物特有の強い原色縞模様。
臭いも甘ったるいような腐った香り。
普通の生物なら絶対に口にしないどころか、近づくことすら躊躇するそれをハングドマン達は"新たな希望"として即貪り食った。
それを摂取したハングドマンは満ち足りた、幸福な表情を浮かべ即座に生命活動を休止。この事はすぐに他の同胞へも伝えられ、種の継続的生存すら忘れ、永く永く恋焦がれた甘い死を享受した。
一切の例外なく。
結果、ハングドマン達は姿を消し、ただタワーという星だけがあり続けた。
そう、タワーはあり続けた。
何故?
それはこの星に"死という概念がない"から。いくら惑星腫瘍がこの星の知性体であるハングドマンの望みを叶え拡散しようとも、ハングドマン達は望み通り死を迎えて最早拡散を促す脚になり得ない。
何よりタワーという星はハングドマンが存在しなくともタワーであり続ける。そのため、多少惑星腫瘍が根を伸ばそうとも崩壊に導ける程の影響を受け付けない。
そして、そのタワーに根を下ろした惑星腫瘍もまたこの概念に取り込まれてしまった。惑星腫瘍がハングドマン達に望まれた形のままあり続け変化することなくただ刻を揺蕩う。
もしもハングドマンに次ぐ新たな知的生命体が産まれたとして、また生きることに苦痛を感じた時に摂取する"良薬"とするのか、生命のサイクルを適切に回すための"寿命"とするのかはともかく、惑星腫瘍は本来の役割である種の拡散という大義を果たせぬまま在り続ける。
例えそこに"死にたい"という意思があったとしても――。
[記録続行]
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