Case.4【墓を掘ってもひとり】
ある星に惑星腫瘍の種が振ってきた。
その星はとうに名前すら呼ばれない程に荒廃していて、星のあちこちに戦争の爪痕が残され、そこら中に"人の面影"が転がっていた。
惑星腫瘍に意思があるのかは定かではないが、あったとしたら酷く困惑しただろう。
何故なら本来、惑星腫瘍が侵略を行うのはそれなり以上には知性を持ち、かつ寿命に余裕のある星だけだ。前者は効率よく自分達の種を星に撒かせ、守らせるために利用し、後者は侵略中に勝手に寿命を迎えて星ごと消滅してしまわないようにするためだ。最終的な目的は自身を星の爆発で拡散させ、より惑星腫瘍としての種を広げるのが目的なのだから。
だというのに――確かに知的生命体の存在を感じ取って来てみればどこを見渡しても死体しかおらず、星自体も何もしなくてもそのうち勝手に滅びるだろうというくらいボロボロだった。
そんな中でようやく惑星腫瘍は生存している知的生命体を発見する。そこに居たのは家族も仲間も、敵すらも亡くして、ひたすら墓を掘るだけのやつれた男。ただひとりこの星で動いている生命。
惑星腫瘍は一応の本能というかで、男の望む者になろうとした。例えば死者を蘇らせる禁忌の術を得る魔本だとか、亡き家族の幻を映すシアターだとか。もしくは新たな家族候補だったとか。
しかし男はそれらに全く目も振らなかった。男が願ったのはたったひとつ、たったひとつのこと。
最早名前も顔も分からない、どこのどいつのかも分からない奴の墓に、この星に多く眠る彼らのための墓石が欲しいと。
その数日後、名も忘れ去られた星は孤独な埋葬人と数え切れないほどの墓石を乗せて、静かに旅立った。閃光や轟音などない、ただ静かに崩れるように消えていく。
まるで眠るような――最期だった。
[記録終了]
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