Case.2【実に好ましいパートナー】

 とある宇宙にとある星が在った。

その星はそこまで大きな星ではなかったが、住民達の総数が他の惑星の知的生命体と比べて圧倒的に少ない故にリソース争いが起きていなかった。

むしろ僅かな同胞を助けるために、必要なら自らの食料や薬を分け与えるまでもした。

 彼らの抱えていた問題、それは出産率と生存率。彼らも子孫を増やすべく交配を重ねてはいるものの、なかなか着床せず、それが叶っても無事に産まれることのほうが稀だった。

それに無事産まれても、外敵が大いこの星では子が大きくなる前に攫われたり食われたりすることも日常茶飯である。

 そんな時に"それら"がやって来た。姿形は彼らによく似ていたが、とても魅力的に見えた。"彼ら""彼女ら"は住民達と同じ言語を話し、意思疎通が出来たし、友好的に接してきた。

住民達も始めこそ何処から来たのか分からない彼ら彼女らに困惑しつつも、貴重な同胞の一団として手厚くもてなした。

 それからの彼ら彼女らはよく励んだ。それは畑仕事だったり、害獣対策のパトロールだったり、子を成すための夜の営みだったりした。

休みなく畑仕事を文句のひとつも言わずに手伝い、腕っぷしが並じゃないのか"彼女ら"であっても人の倍はある害獣を軽々追い払った。そして、性行においては無尽蔵のスタミナで女性を蕩けさせ、殿方の性を絞り尽くした。

 そして"彼ら"に種付けされた――種付けされた"彼女ら"は当たり前のように妊娠し、また当たり前のように子を沢山産んだ。生まれた子供も"彼ら""彼女ら"のように魅力的で、仕事熱心で、"性的"であった。

 それまでが嘘のように世界に住民達が増えていく。そうなればこの先に待っているのは混乱と騒乱と飢餓だ。

今までは数が少ないからこそ満ちていた食料や資源も、増えすぎた住民にはまるで足りない。争いの"種"はそれだけではない。

部族間で"彼ら""彼女ら""彼ら彼女らから産まれた子供"を巡って争いが起きた。子を確実に成すことが出来る存在は元々の住人達にとっては奇跡に等しいことだったし、それを抜きにしても強く美しく、性的魅力に優れた"彼ら""彼女ら"は手放し難く、独占したい存在になっていたのだ。

⋯⋯ある者は、定期的に【食料】を生み出せる家畜にすらなるとも思っていたようだが。

 そうしてかつては足りないながらも支え合い"同胞"として生きてきた者達は、いつしか増えすぎた"敵"と奪い合い殺し合った。地上が住民達の亡骸で足の踏み場がなくなるまで。


 そして、星は死んだ。自分の上で眠る住民達のように、同胞を装った"彼ら""彼女ら"のように。


[記録終了]

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