あるある! 最短勇者

@koruzirine

第1話 あるある! 生まれ変わったら主人公

「もう、無理かも」


 布団に包まれ白い天井を見ながら、俺はそう一人でつぶやいた。


 俺、田木雅人たぎまさとは今入院中である。というよりという方が正しいだろう。


 俺は、幼い頃から病気をわずらっていた。そのため、入退院を頻繁に繰り返していた。今までなんとか持ちこたえていたが、もうそろそろ限界のようだ。


 「ついに、死ぬのか」と思うと、なんだか複雑な気持ちになる。覚悟はできているし、もう大した心残りはない。ただ、強いて言えばあのゲームをやってから、死にたかった。


 それは、『あるある! モンスターバトル』というものだ。通称『あるモン』である。


 『あるモン』の内容は、簡単に言えばモンスターを倒したり、困っている人を助ける。そして、仲間を増やし、最強と言われるモンスターのボスを倒すことで、世界の平和を手に入れるというものである。


 これだけだと、ただのどこにでもある普通のゲームで、別にやりたいとは思わない。だが、『あるモン』の面白いところは、あるあるネタがたくさん出てくるところだ。


 製作者の偏見による、あるあるネタはどれも大笑いとまではいかないが、クスッと笑えて面白い。そのため、熱狂的なファンがいる。ただ、マニアックなため、ほとんど知られていないが。


 この『あるある! 』シリーズは今回で、三作品目だ。前作はホラー、前々作は謎解きであった。今までの作品を全てやっている俺にとっては、ずっと待ち望んでいたことだ。


 そんなことを考えていると、なんだか急に意識が遠のいていく。そして、俺は目をつぶった。





 木目の天井が目に入ってきた。


「あー、ついに死んだのか。ここが天国なのか」


 一人でつぶやいた。俺は、ベットの上で目を覚ました。そして、辺りを見渡してみる。


 なんというか、リアル感がありすぎる部屋だった。例えるなら、西洋の少年の部屋という感じだ。ただ、どこかで見たことがあるような部屋だった。そう思っているとき、部屋の扉の向こうから女性の声がした。


「ルーク、早く降りてきて、朝ご飯の時間よ。下で待っているからね」


 そう聞き終わったときのことだった。俺の体が意識とは別に、勝手に動いた。操られるようにベットから起き上がり、部屋を出て、部屋近くにあった階段を降りた。


 あまりにも急だったため、なにが起こったかがわからず、パニックになった。


 これが天国というものなのだろうか。不思議に思う。ただ、ルークという名前に聞き覚えがある。


 下の階に降りると、女性がいた。女性はせっせと、料理を机に運んでいた。その机の上には、パーティーでもするのかと思うほどの料理が置かれている。


「ルーク、起きたのね。早く食べてちょうだい。今日は出発の日なんだから。お母さん、はりきって料理たくさん作ったんだからね」


 その言葉を聞いたとき、俺は思い出した。なんだか見たことのある部屋に、聞いたことのある名前、それから出発の日という言葉、そして勝手に動く体。


 これは、あの『あるモン』の世界だ。


 そうなると、俺はルーク、つまり主人公ということになる。


 そんな、今流行りの「異世界しちゃいました」みたいなことが実際に起こるのか。それとも、俺がゲームがしたいと思ったから、神の凄まじい権力とかで、天国にゲームの世界観を真似たのを作ってみた的なことなのだろうか。


 『あるモン』風に言うと、「あるある! 生まれ変わったら主人公」といったところだろう。


 まあ、どちらにせよ、きっとたぶん楽しいだろう。なんだか、ワクワクしてきた。


『勇者英雄伝が今、始まる』

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