なんなの?

さゆりは夜風に乗って高く舞い上がり、ゆらゆらと漂っていた。


自分の知らないうちに世界の常識が変わってしまったのだろうか?

そんな話を、どこかで聞いた気がする。


あの男と少年の両親のやり取りから察するに、少年は何か無礼を働いたことになっていた。

だが、さゆりの目には、そんな様子は微塵も見えなかった。

むしろ、少年は礼儀正しく、すれ違いざまに挨拶までしていた。


――まさか、あの男が両親に嘘の報告を?


わが子を殺した男の言い分を、あんなにも鵜呑みにできるものだろうか?

疑うこともなく、ただひたすらに頭を下げるなんて――普通であるはずがない。


――あの男が、この村の権力者なのか?


人を殺しても正当化できるほどの権力を持つ者なら、わざわざ自分で死体を運ぶようなことはしないだろう。

それこそ、その権力で他の人に運ばせるなり、犯人役を命じるなりするはずだ。


「……あーもう! 意味わかんないっ!」


思わず叫んだ声は、誰に届くこともなく、夜の闇に吸い込まれていった。

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