楽しい……?

あれから何もする気になれず、星空や景色をぼんやり眺めたり、うたた寝をしたりしているうちに、気づけば、夜が空を包んでいた。

祭の夜だった。


正直、この村の人たちには、どこか距離を置いてしまっている自覚があった。

けれど、それでも――あの少年が心から楽しみにしていたという祭だけは、どうしても見ておきたかった。


届くことはないだろうけど、「凄かったよ」って、もし言えたなら。

それだけでも、少しは弔いになるような気がしていた。


どこで、何時から始まるのかも分からなかったが、空から見下ろせば、明かりがひときわ集まっている場所がすぐに見つかった。

さゆりは気持ちを切り替え、ふわりと宙を滑るように、その光の中心へと降りていった。


――けれど、近づくほどに、不気味な静けさが耳を打った。

屋台の呼び込みも、子供たちのはしゃぐ声も、威勢のいい掛け声も――ない。

音が……まるで、存在しなかった。


それでも光は確かにあった。

さらに距離を詰めると、村の広場が祭の会場になっているのが見えた。

そして、そこに集まった人々の姿も。


――うごめいていた。


華やかな模様をあしらった衣装に身を包んだ人々が、静かに、しかしどこか熱に浮かされたような様子で、体をくねらせ、仰ぎ、あるいは舞い踊っていた。

昨日、少年を運んでいた黒ずくめの者たちを思わせる動きだった。

ただ――今日は、その闇を覆い隠すように、衣装の色だけが異様に鮮やかだった。


これが、この村の“祭”だというのか。


楽しい……の? これが?


さゆりは、無意識に眉間に皺が寄るのを感じた。


本当なら、屋台を眺めたり、楽しそうな家族の笑顔を見たり、祭囃子に心を躍らせたり――

そんな、賑やかで明るい祭を想像していた。

そのために、自分の足で歩いて見てまわろうと、何度も練習までしたのに。


それなのに。


さゆりはただ、広場の様子を遠くから見つめるだけだった。

やがて、静かに背を向け、夜の空へと舞い上がった。

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