第5話 訃報と質疑応答

 壁の時計が午後一時をお知らせした。

 そして待っていたかのように扉が開けられる。


「 二十一番・西河丘稜太郎ニシガオカ リョウタロウ、出ろ」


「遂に来たか」


 警備員の指示に従い意気揚々と部屋から出る。

 気のせいか廊下は少し肌寒い。


 それにしても人数減ったか?

 俺の前後に人が居ないどころか、警備員すら配置されていなかった。


「これで全員だ」


 いや、何人か出てない奴が居るぞ?


「そして諸君らに知らせておかねばならないことがある。残念ながらこの準備段階で六名の死亡が確認された」


「は?」


「死亡者を読み上げる、三番・鈴木冬至スズキ トウジ――」


 死亡者だと?

 つい呆けた声を出してしまった。

 だが、それは他も同じで知り合いの訃報を聞き、膝から崩れ落ちる奴も居た。

 幸い…と言っていいのか分からないが、俺の知り合いは死んでいなかった。


「一七番・篠崎陽シノザキ アカリ


「嘘!篠崎先生が?!」


 でもなんだこれ…軍服女が名前を読み上げる度に、それを聞いた人たちがボヤく度に、まるであの女が銃を俺の後頭部突き付けているかのような緊張感が喉の奥から込み上げて来た。


「うっ…ぷ」


 先程までの優越感が嘘のようだ。

 無理やり飲み込んだ吐瀉物のせいで喉が熱い。

 心が濁る。


「では諸君。良い結果を楽しみにしているよ」


 そして彼女の声色が明るくなり、その変化は俺たちに今この段階ではこれ以上の死亡者は居ないことを告げるようだった。

 しばらく沈黙が続き、俺たちは警備員に促されるまま廊下に不揃いな足音が鳴る。


「では諸君!まずはこの召喚に応じてくれてありがとうございます」


 顔を上げると先程の狭い廊下と違い、広々とした体育館のような場所に辿り着いていた。

 そして目の前の壇上に上がった軍服女は、大きな声で俺たちに感謝を伝える。

 だが、俺は別に召喚を望んでいただけで応じた気は無いので、少しあの女の言うことに引っ掛かりを感じた。


「まだ混乱している方も多くいることでしょうから、試験の前に質疑応答の時間を設けます。こちら側で答えられるかどうかは別ですが、是非この場で疑問を解消し、次の試験を気分晴れやかに受けていただきたい所存です!」


 女はああ言ったが、壇上の下に居る全員は何も言わない。

 そりゃそうだ、いきなりここに来て知り合いの死亡者が出て、そこで元気良く質疑応答を始めたらイカれ野郎だ。


「では、質問良いですか?」


「はい、三十三番・燐上晴樹リンジョウ ハルキさん、なんでしょうか?」


「えーっと――」


 燐上の質疑応答を要約するとこうだ。

 まずここはどこだという問いに対して、軍服は勇者育成機関としか言わない。

 これはリビーに問い掛けた時も似たような反応を示した。

 次に魔力と勇者について、これにはノーコメントらしかったが、魔力については魔法を行使する便利な力とだけ答えていた。


 どうやら燐上はこういうヤバい場面にテンションが上がるイカれ野郎だった。


「最後に、実力診断テストは何をやるんですか?」


「ふむ、その質問も挙がると思っていたよ。まず簡単に説明させてもらうと、この機関では、魔王を倒す為の勇者を育成している。そして、育成には必ず成熟があるんだが、それを示すのが諸君らに与えられた番号だ」


 やはり番号にはかなり大きな意味があるようだな。

 こうして質疑応答を聞いていると、以前疑問に思ったことが解消されていく感じで、心が休まる。

 大分精神力が回復してきて、頭が回るようになってきたぞ。


「そして、その番号の一番を一週間維持出来たら勇者として卒業だ」


 なら――。


「なら、全員勇者として卒業することもあり得ると?」


 俺の思考を読んでいるのかと思うくらい、俺の心情に燐上が被せて来る。


「あぁ、あり得る。ただ、諸君ら私含め人間だろう?それを前提に置けば有り得ないとも言える」


「全員卒業出来たことはあるんですか?」


「あるにはある。が、一組だけだな、あれは凄かった」


 そして軍服は話を突然切り上げた。


「っと、時間だ。質疑応答は終了、テスト頑張ってくれたまえ」


 そして壇上から降りると、カツカツと右側の壁に備え付けられた扉から出て行った。

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