第3話 聞き馴染みのある言葉
「ちょ、痛いんだけど!あんま引っ張らないでよ!」
「テメェら!離しやがれ!」
横に三列程並んだら限界の広さしかない廊下で、男女の抵抗する声が溢れた。
そんな中、俺は静かに警備員に運ばれる。
どうやら人畜無害と判定されたのか、他の暴れる生徒には2人から4人の警備員が付いていたのに対し、俺だけ1人ときた。
燐上もそうだ、彼もまたこの状況下で冷静を保っている。
「では、諸君らの目の前にあるその白い扉が並ぶこの廊下とその中の部屋が、これからの諸君らの家と思え。では、納得した者から部屋に入れ」
緑が基調の軍服のようなものを纏った背の高い女性が、廊下によく響く声で説明をする。
だが、そんなことを言われても大人しく部屋に入る奴は居なかった。
そういう俺も入らない時の選択肢が気になり、敢えてここは入らない選択肢を取る。
「なるほど。1人も入らなかったのはこの組が初めてだ。良いだろう、その意欲気に入った。まぁ良い、期限は設けん…だが、ここがお前らの寝泊まりする場所だというのは既に決まったことだ。安心しろ…いや、すまないが何も無い部屋だ、くつろげ」
おぉ、こうなるのか…っていかんいかん、ここはゲームの世界でも夢の世界でも無い。
俺は当事者だと言うことを忘れたら、周りを見て呆けてる間に殺されそうだ。
気を付けないと…。
「ぐあっ!」
「うぶっ?!」
「テメェらいつまでも俺を拘束出来ると思ったら大間違いだ!」
軍服の女付近に居た
アイツはああやって暴れるだろうと思ってたけど、まさか4人の警備員を跳ね除けるとは予想外だった。
「楼助!おまっ、指示に従いなさい!」
先生は警備員に抑えられながら、必死に声を裏返させて生徒を止める先生の鑑を見せた。
まぁ、多分保身だけどな。
「先公ォ邪魔しないでくださいよ…俺ァ、コイツらに用があるんすよ!」
他の生徒から離れて、騒ぎの中心に引き寄せられる警備員たちのせいで、俺のところからはその状況があまり見えない。
「それ以上近付くと貴殿に発砲せざるを得ないが?ここからどうする?」
「ウッセェ!撃ってみろよ!」
楼助が啖呵を放ったその瞬間、ドンッと鈍く重い銃声が響いた。
廊下内は騒然とし、叫び声が複数上がった。
「あぁウッセェ!テメェらもウジウジ騒いでんじゃねぇよ!」
だが、騒ぎの元凶はその後も威勢良く言葉を発する。
どうなったんだ一体…。
「ほう、既に魔力を操る術を会得しているとは…貴殿は勇者の才能があるな」
「あん?」
「8番・
無自覚系は俺たち影の者の特権じゃねぇのかよ。
俺は心の中でツッコみ、この状況の終わりが見えたので1人で部屋に入った。
「案外広いな」
俺が想像してた独房スタイルの内装とは裏腹に、壁紙は白一色。
同色のベッドが脇に設置されていて、同じく丸い机が中央に鎮座していて、その上には白いモニターが置かれていた。
それとベッドとは反対側の壁に、大きなデジタル時計の時刻が表示されている。
広さは大体十二畳程度で、文句のつけどころがあるとしたら枕が違うことくらいだろう。
あと、単色過ぎて吐きそう。
「勇者育成サポーターのリビーです」
「うぉ!?」
部屋を見渡していると、机の上のモニターに悪魔のような角を二本、頭に生やした四角い瞳孔を持つ、モフモフの化身みたいなのが映った。
「
ソイツはリビーと名乗ると、予定を読み上げた。
実力診断テスト…この世界で初めて馴染みのある言葉が飛び出した。
どうせ勇者同士で戦わせるんだろうな。
「って!そんなん今のところ楼助の一人勝ちじゃん!」
リビーという対象が居たからか、俺は部屋の中心で叫ぶ。
だが、実際今のところ俺にスキルや固有魔法は無いしこのまま行くとその通りになる。
「楼助様に繋ぎますか?」
「繋がんでいい!」
午後一時…あと一時間と無いじゃないか。
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