第2話 そっちとこっち

獅子峰宏太シシミネ コウタ、10番。東條麻里愛トウジョウ マリア、11番」


 説明もほとんど無しに、俺たちに番号が割り振られていく。

 抗議の声は一切届いていないかのように、どんな問い掛けにも眉ひとつ動かさずに、ひたすら口を動かす扉前の白衣を着た男に対して、篠崎先生が接近する。


「だっ!?」


 すると、一定以上歩いたところで、正確にはあの男の二歩手前くらいで、篠崎先生はまるで壁にぶつかったような反応をして、反動で尻餅を付いた。


 どうやら本当に透明な壁が存在するようで、先生はその壁を手で触ったり、蹴ったりして確かめていた。

 次第に諦めたのか、それとも考えるのを止めたのか、抗議を再開した。


「さっきから聞いてるでしょぉ!貴方は一体何なんですか!何の権利があって我々を拉致したのか、説明を願います!」


 確かに、こちらとしては舞台説明が無いと燃えないよな。

 燐上も多分同じ考えだろう、さっきからずっと黙っている。

 黙っていると言えば他の生徒もそうだ、この非現実的な光景を目の前にして私語を完全に慎んでいる。

 全国の校長先生が欲しがりそうな部屋だ。


「おいってば!」


「17番。静かにしろ」


「だいたいさっきからその番号は何ですか?!僕のこと舐めてるんですか!僕は篠崎陽シノザキ アカリです!名前で呼んでください!」


「警備員に次ぐ、17番を黙らせろ」


 白衣の男は冷めた目を持って、冷めた口調で警備員を呼んだ。

 扉の向こうで待機していたのか、数秒も経たずに2人の黒い服装をした男が入って来る。

 ソイツらは透明な壁を超えて俺たちの居る部屋へ入って来た。


「アンタら!寄って集ってなんです!やめっ、離せ!おい!警察呼ぶぞ!」


 すぐに2人は先生の両腕を一本ずつ掴むと、強制的に先生に後ろ手を組ませて、手錠のようなモノを手首に装着させていた。

 ひどく抵抗する先生に対して、片方の男は痺れを切らしたのか、腰のぶら下げていた警棒のようなモノを手に持って、先生の腹部に振り下ろした。


「ぐっ…!?」


 先生はくの字になって膝をつく。

 俺の背後からは女子たちの悲鳴が上がった。

 部屋は更に静まり返り、先生の荒れた息遣いと啜り泣く声が聞こえ始めた。


「警備員No.79。手荒にやれとは言ってない。それにこの部屋の人間は勇者として育成する。ここで怪我をされたらお前を処罰しても良い。降格処分は嫌だろう?」


 勇者…やはり異世界転移は間違いない。

 育成と言っていたから、これから番号に振り分けられて、多分魔王討伐のために訓練されるんだな。

 全員平等に訓練されるなら、俺は1人で行くぜ的な一匹狼ルートはキツそうか?


「は…はい!申し訳ございませんでした!」


 降格処分に怯える警備員。

 ここではナンバー…つまり俺たちと同じく番号で管理されてるのは、そっち側もこっち側も同じというわけか。

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